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溶けますよ
「カムヒア森田くん」


寝転んだまま手招きすると、りょーはオレの横に座り怪訝な顔をする。


「日焼けタイムだよ」


のっそり起き上がり説明すると、顔を指差して可笑しそうに笑われる。


「顔赤い」


両手で頬を挟まれる。熱い手もりょーのならば鬱陶しくはない。


「はるがアイス買ってきてくれたんだ。一緒に食おーよ」


苦しさと息苦しさを紛らわしながら笑いかける。
夏休みって、なんて最高なんだろうか!これからたくさん一緒に居られるよー。りょーがはるに軽く手を挙げて挨拶している。


「抹茶あんの」


「うん、たなっちがとってくれてるよ」


「ありがと」


ぼそりとはるにお礼を言ってからついてくる。シャイボーイだねー。
部屋に入ると、さっきまでの炎天下が嘘のように涼しい。


「ああうめー」


アイスが口の中を冷ましていく。隣ではりょーが抹茶アイスを口にくわえながらオレを見て笑っている。


「なんだね?」


「お前、焼けねえって」


鼻も赤い、と笑うりょーに若干の悔しさが。


「それが根性出したら黒くなんだよー。ちびっとずつ焼いてけば、夏休み終わる頃には完成だね」


「焼き過ぎたらデコが劣化すんだろ」


りょーがオレの前髪をばさっとあげて、まじまじとデコを観察する。
デコが劣化?ま、さ、か


「オレ禿げてる?え、嘘!まじかー、今からはきっついよー。うわ、りょーどーする?まじか、ああでも、髪がなきゃないでオシャレ坊主にすんのもアリだね」

ペチリ、とデコをたたかれて我に返る。なに。


「アホ、違えよ。つるつるして触り心地いいんだよ」

つるつる?なんだかよく分からんが、オレが禿げねーように、心配してくれてるんだよね。


「ほどほどにするよー、ご忠告に感謝ー!髪の毛は大切にしますよ」


アイスを食べながら薄目になるりょーは、まあ納得したならいいけど、となんだか微妙な反応をする。


横に並んでアイスを食べながら話していると、オレの腕を掴みニヤリと笑うりょー。なに?


「垂れてる」


そのままオレの手を引き寄せ、いきなり手首から手の甲をゆっくりと舐めた。
そして、オレのアイスを一口かじりニッと笑う。うっわ、うっわ、なにしちゃってんの。


そのまま腕を引かれたので思わずりょーにもたれかかる。Tシャツを脱いだままの上半身は、いつもよりダイレクトにりょーの体温を伝えてきて、背中にまわされたりょーの腕の感触にぞくりとしてしまう。


「服、着ろ」


そう呟くりょーがまたそっと背中を擦ってくる。
こんなことされたら、血がすごい勢いで駆け巡ってるから!耳の奥から流れる音聞こえそうだし!


相当変態な顔をしているのか、りょーが笑っている。オレの顔、そんなやばい?だってさ、んなことされたら変態な顔にもなるよ。ああ、りょー


「オレも抹茶食う」


りょーの腕を引き、アイスをかじる。そしてそのまま軽くちゅーしてみる。
されるがままなりょーの首に腕をまわし、首元に顔を埋める。あーこれこれ。
そっと見上げてみると、りょーはなんか初めて見る顔をしていた。


微笑んでるんだけど、なんか違う。苦しい顔?いや、違うなんだろ、なに


「何勝手に食ってんの」


そう言われた瞬間顔が近付いてきて、焦ったようなキスをしてきた。冷たいりょーの唇が今日はなんか強引で、唇を舌でなぞってくるとそのまま唇の隙間から舌を入れてくる。


おおっと、ベロちゅーですか!堪らん、まじで堪らんよ!一度離れた唇がまたゆっくりと近付いてくるのを待っていられなくて、自分から近付く。
りょーの後ろの髪に指を通しながら、冷たい唇の感触を確かめる。最高。


「なに?」


いつもより強く肩を掴まれ見上げると、じっと見つめてくるりょーが首に顔を近付けてきた。


「ちょっとだけ」


りょーはいつもより低い声で囁くと、首筋に、キスなんかしちゃってるって!なにこれ、なにこれ!ああもう、どんどんして!大歓迎ですよ!


「ん、つめ、てー」


冷たい唇の感触に戸惑いながら、首筋に優しくキスしてくるりょーの髪にそっと触れる。心臓が大変なことになってるのに、嬉しくてにやけてしまうよ。


「あつお」


顔を上げたりょーと目が合った。いつもと違う表情に息が止まる。見つめてくる視線が、なんか痛い。



ガンガンガン!とガラスを叩く音にびっくりして横を見ると、ガラス戸にへばりついてニタリと笑うよーくん。ああこれこれ。覗き魔の家でこんなことするからだよね。ああー、オレら変態じゃねーかよ。


「驚きのせいで、感触が消えたじゃん」


せっかくイチャコラしてたのに。あの冷たい唇の感触を忘れないよう、全力で記憶するつもりだったのに。記憶してどーすんだって感じだけども。


「んなもんこれからいくらでも出来るだろ!お前達早くアイスを食え!溶けてるから!」


よーくんに急かされて、とりあえずアイスを食べ終える。あー、残念。


「冷たかった」


りょーが笑ってこっそりと囁く。なにが?唇が?ああもう、なんでそんなかわいーんだよー。なんなの、オレをたぶらかしてどーしたいのだ。


「りょーは小悪魔」


ぽつりと出た感想に、りょーが変な目でオレを見てくる。さっきの、なんか焦ったような表情は消えて、すっかりいつものりょーだ。

「モリー、お前いつもならキレんのに、何で今日は何も言わねーの?ねえ、何で?」


なんだか悪い顔で笑っていらっしゃる。なによ?
確かに邪魔された時りょーは、ちょっとほっとしたような顔をしていた。


「あー、ある意味感謝」


首の後ろをさすりながら横を向くりょーの顔はオレからは見えない。
なぜ感謝?邪魔されて嬉しいの?なに、ちゅーしたらあんまりだったとか?


「やっぱりか!たなっち裸族だし誘惑するしで、大変だよねそりゃ!お前顔やばかったし!ああやっぱ邪魔して良かった!」


よーくん裸族ってなに、オレ下は脱いでねーよ。そして、いつから見てたわけ?ね、りょー、感謝って


「あんまりだったの」


一瞬だったからあんま覚えてねーけど、オレはすげー嬉しかったのに。


「は?待て、何その顔。あんまりって何だよ?どっからこんがらがったか言ってみろ!そして服を着ろ!」

「修行、すっかなー」


でもそれって浮気?濃厚なちゅーの達人、どっかに居ねーかな。オレにテクを伝授してくれよー!


「あーあ、森田のせいでたなっちが悲しそうだよ」


オレの横に座って慰めてくれるはる。そーだよ、りょーはあんまりなんだって!悲しい。


「待て!オレ何もしてねえだろ!むしろ耐えた!」


「我慢してたの」


嗚呼、無情。


「待て、待て!何か違うよな?噛み合ってねえよな?おいはる、説明しろ!」


「オレも分からないよ」


「いい加減たなっちの扱いを覚えなさいモリー!この場合は、放置!」


え、放置は勘弁!

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