ELSEWHERE
タイムラグは頭のせい
りょーがさっきから微動だにせず、無言でオレの醜態を穴が開くほど見ている。
黙ったままりょーはなにも言わない。オレを好きだって言ってくれたのって、オレの妄想じゃないよね?取り消すなら早くして、オレが言われたこと実感する前に。
「オレと、同じ意味で好きなの」
黙ってたりょーがいきなりオレを引き寄せる。
りょーの匂い、りょーの腕の中。実感したら堪らなくなって、ありったけの力で抱き締める。
「りょー、間違いなく、完全に好き」
胸元に顔を埋めると苦しくなるほど強く抱き締められる。
「なあ、マジで」
信じられないって感じの戸惑いが声に出てる。なぜ?そっと顔を上げてりょーを見てみる。
間近で見るりょーはまだ疑っているみたいだ。なんでそんな疑うのか分かんねーけど、
「オレ、愛しいって初めて思った。りょーがすげー大事。りょーが居てくれたらオレなにも怖くねーよ。それに、りょーが好きだからちゅーしたいし、ハグしたいんだよ」
そう、愛しい、大切。だれかにこんなこと想ったの、まじで初めてだ。
笑って言うと、りょーは目を見開いてオレをまじまじと見る。あ、固まった。
「りょー、オレいつからか分かんねーうちに好きになってた。オレきっとさあ、ずっと前から好きだったんだよ」
固まっていたりょーは、恐る恐るって感じでオレの腕に触れる。そして段々顔を歪めてまた泣きそうな顔になる。こんな顔、りょーらしくないよ。
「マジだよな、今さら勘違いとかなしだから。これでいつもみたいになったらオレもう無理だって。なあマジで、お前、本当に」
言葉が続かなくなって、りょーは泣きそうな顔のままオレをまた抱き締める。
オレの頭を抱き込み、何度も確かめるように髪に触れてくる。少し力を込めてりょーの背中を掴むと、より一層強く抱き締められる。
「もっかい言って」
そっと両手で顔を支えられて上を向かされる。りょーはまだ少し不安そうだ。さっきから見たことのないりょーばっかで、どーしていーのか分からない。
「ちょー好き」
頭を撫でてみる。りょーの髪は触り心地がよい。そっと目にかかっている髪をはらってあげる。りょーはオレをじっと見つめてから、
最高にオレの好きな顔で笑った。こんな子供みたいな顔で笑うとか反則だよ。間近で見てしまったオレはショック死しそうになる。かわいー、かわいー、こんなかっけーのに、こんな子供みたいに笑ってる。
「まっじかよ!」
オレの頭をぐしゃーってしながらまた子供みたいに笑うりょー。オレはまだりょーの言葉が実感出来てねーけど、どうやらちゃんとりょーには伝わったみたいでほっとする。
「ああー!やっべえ!」
いきなり寝転んで顔を覆うりょーは、悶えながら一人で唸っている。この反応はどーゆーことだ?
起き上がったりょーはオレをまた抱き寄せて、座ってるオレをいきなり乱暴に持ち上げた。
そう、荷物のように持ち上げた、がばっと。そのままりょーの足の上に座らされる。
なにこれ。おいおい、勘弁だよ。オレの男としての威厳は木っ端微塵じゃねーかよー。
りょーが向かい合わせになってまたオレを見てニカッと笑顔になる。こんな顔をされたら、なんも言えねーじゃん。かわいい。
「ああ、まじかよ!オレを好きなの?なあ、愛しいっつったよな?好きなんだよなオレの事。ああー、あつおがオレを好きか。へえ、そうかそうか、好きか。死にそうな位好きって、お前そんな好きなのオレの事」
オレの首元に顔を埋めて嬉しそうに好きを連発しては笑っている。
「りょー、嬉しいの?」
オレがりょーを好きなことが、そんなにも嬉しいの?
「言葉じゃ言えない位。オレ今完全に頭イカれてるって!ああもう別にイカれてても良いし!なあもっかい言って。な、早く、はい言って」
りょーがいつもと違う。オレの腕を引っ張り笑って催促してくる笑顔は甘い。ちくしょ、かっけーよー!
しかもなんかさ、なにこのりょーの早く、早くって。りょーがなんか、これは甘えてんの?なにこれ!すっげーかわいいって!ああー頭イカれてんのはオレだよかわい過ぎてしにそーだ。
「りょーまじでかわいーって。ホント好きだし」
「あつお、もっかい。誰が誰を好きなの」
ああもうその顔!ちょー甘いんですけど!りょーがずっと笑っている。
「オレがりょーを好きなんですよ」
「ん、ありがと」
そう言って満面の笑みで抱き締めてくる。なっんだこのりょーは!ちっさい子みたいな無邪気な笑顔だし、なんか違う!りょーが変!とてつもなく甘い。最高。
オレがりょーの頭をポフポフしても気にせず笑っている。試しに前髪を軽く引っ張ってみる。やはり笑顔。
「何してんの」
「りょーが甘いから堪らんのですよ」
「甘い?それお前だし。あつおの顔すげえ好きなんだけど。見てて飽きない」
間近で見る嬉しそうなりょーを見ているときゅきゅっと心臓が鳴りまた一回り小さくなる。ああー、ホントかっけーよ。
「こっち来て」
笑ってオレを引っ張るりょーにまたハグされる。見上げたオレを見てふはっと笑うりょーを見ていると、急になんだか分からないくらい苦しくなる。
りょーが嬉しいって。オレがりょーを好きなことが、そんなに嬉しい?
オレのこと抱き締めて優しく笑う。オレが好きって言ったら子供みたいな顔で笑う。オレに触れる手は、すごく優しい、というかなんか甘い。
「りょー、りょーは、ねえりょーはさ」
焦ってちゃんと話せない。
「何」
りょーはオレの髪を触りながら優しく促す。
「ねえ、ちょっと待って、え?りょーって、もしかするとひょっとしてオレのこと、好き、なの」
嘘だよね、え、待ってでもさっき確かに好きって
「あー、やっぱりそうだろうと思った」
りょーはなぜか笑い出す。え、待って、ねえ、笑ってるってことは、なに、違うの?まじで、ちょっと、ああもうちゃんと働いてオレの脳ミソ!
まじで大混乱。頭ん中はもうなにがなんだか雑然としてる。
「んっと、アホ」
りょー、笑ってないで、アホなのは知ってますから。
「りょー、ねえ、なにがどーなの、好きって言ってくれたよね?まじ?」
お願い、もっかい言って。
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