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ELSEWHERE
シンクロする気持ち
「日本に帰ってどーすんのとか、色々考えたけど。やっぱりオレが居る場所はこっちだと思って戻って来ちゃったー」


はは、と笑うレオナくん。帰って、どうだったの?オレは聞きたいことがたくさんあり過ぎて、なにも言えない。


「その後は見ての通り。啓は相変わらずだし、それが寂しくてなんか辛いのも、全部昔と同じだよー」


苦笑いなレオナくんに、オレはなにを言えばいいのだろーか。


ああすっきりした!と伸びをして、レオナくんはオレを見る。ねえ、あの曲を聴いて、なにを思ったの?


「だれの全てになりたいの?」

「ああ、あの曲?」


そう。レオナくんはあの曲を聴きながら、だれのことを考えたの?


「啓の、全てになりたいとかは思わない。ただ、オレはずっと啓だけだった」


ああ、やっぱり。これは兄弟ではなく


「レオナくん。オレらは双子だよー」

「双子?」


そう。オレも、おなじこと思ったもん、りょーに対して。レオナくんの気持ちを全部知ることは出来ないけれど、きっとそうだろうなって、思っていた。


「レオナくんはけーくんがだいすきだねー」


しんみりと呟くと、レオナくんは当たり前ー!と笑っている。


「ジャスト、ラブ?」


ねえ、レオナくん。ただ、すきなだけ?それとも


「誰を、よ、なに」


驚いてる?動揺してる?分からないが、それはレオナくんが自分で決めるとゆーか、自分で知ること。オレには分かんねーから。


「ちょっとオレ自分の心を見つめてみるわー。さすがたなっちだよ!前から何となく感じてたけどさ、たなっちは、何かオレと通じるものがあるわー。だからたなっちに相談したんだよねえ」

やっぱり?オレも思うー。うんうん、と頷けばレオナくんも笑う。あ、ちょっと元気になった。よかった。それからしばらくレオナくんは、ううん、ジャストラブ。と呟きながら難しい顔をして考えている。
なんだか行き詰まっているみたいなので、話題を変えてみる。

「レオナくん。オレね、まだだれにも言ってないんだけど。つか、ドン引きな話かもしれねーけど」


りょーのことを告げる。あの曲はただのきっかけだったけれど、間抜けなオレにやっとこさ気付かせてくれた。だからレオナくんには感謝である。もし気持ち悪いと思われても、それはしょーがねーよ。その時は気分悪くなるような話をしてごめん、と謝ろう。


「まっじかー!だからか、オレも不思議だったんだよー。あの曲聴いて、オレの事もだけど何かたなっちが浮かんでさあ!あのイケメンと居る時のたなっちって周りが消えてる感じだったから」


レオナくんは笑って言う。周りが消えてる?なに?


「何か、森田くんしか見えてないって感じだし、最近のたなっちってすげー幸せそう。へえ、たなっちは男が好きなの」


そうかー!納得!と笑うレオナくんに頷く。
レオナくんはオレの周りにも何人か居るしね、と案外平気な顔をしている。最近ぐっとホモ率が上昇したオレの周りにも何名かいらっしゃいますよー。


そうか、オレはそんなしあわせそうに見えるのかー。確かにりょーと居る時は、かなり周りが見えてない。オレ大丈夫なのか?


「戻って来たらたなっちが元気になってて、何かあったんだとは思ってたけど、森田くんが居るからなんだねー」


うん、オレはりょーにすごく助けてもらってる。白石のことだって、めちゃくちゃなりょーの暴れっぷりを見てたらなんかへこむとかどころじゃなくなったし。

「りょーの存在は、いつもオレの真ん中に在るんだ」

ふにゃふにゃしてた自分に少し芯が出来たような、支えが出来て少しだけしっかり立てるようになった気がするんだよ。


「また信じられる人に出会えて、本当に良かったね」

レオナくん昔のことまだ気にしてくれてたのか。あの頃のことはなにも言ってないのに優しいなー。


「うん、めちゃくちゃ優しくて信用出来る人だよ」


「森田くんてたなっちの事すっごい優しーい顔で見てるもんねー!孫を見るじーちゃんみたいな感じ」


ええ?それっていいことなのか分かんねーけど、優しい顔かー。もしそう見えるなら嬉しい。りょーがオレを大事に想ってくれてるってことだもんなー。


「たった二年でも確実に色んな事が変わってくんだよね。オレの事なんて皆忘れちゃってるかなって思ってたんだー。なのに啓が変わらずにオレを迎えてくれたから、泣きそうになっちゃったよー」


ああなんか理解した。
レオナくんはなにかが変わることを期待して向こうに行った。なのにいざけーくんに会ったら、変わらずレオナくんを迎えてくれたことが嬉しくてたまらなかった。そんな自分の矛盾が苦しいんだよね。


レオナくんの気持ちがまるで目に見えるようだよ。なんでこんな通じてるんだろうね。感覚が似てるのかなー?

レオナくんはなにか吹っ切れたような顔でオレの話を聞きながら頷く。


「ねえたなっち、何となくオレ理解したかもー」


レオナくんはすっきりした顔でオレを見る。


「オレも、たなっちぐらい周りが消えてる、啓と居る時は。それに、オレの真ん中はずっと啓だ」


ふっと窓の外を見つめるレオナくん。横顔からは、迷いが感じられない。


「たなっち、ありがとう」

振り向いたレオナくんの髪に朝日が当たって輝いている。笑う顔は明るくて、いつものレオナくんだった。

「オレなにもしてない。こっちこそありがとうだよ。レオナくんのおかげ」


「マイブラザーよ!初恋頑張ってねー!」


長々とごめん、とバタバタと帰って行くレオナくん。なにがどうなったのかいつもの如く分からん。肝心なことは説明なしなの?相変わらず自由人だねー。それともオレの察しが悪いだけ?その可能性も大だな、なんたってオレだから。
それにしてもレオナくん、初恋ってこっ恥ずかしいよー。確かにこんな風にだれかを好きだと感じるのは初めてですけどね。しかもすげー好きですけどね!

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