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チャラ男の名言集
週末、いつもと同じく朝方まで遊んでマイホームへ帰る。とりあえず昼まで寝ましょうかね。ベッドに潜り込み、眠りに落ちようかという時、携帯が着信を知らせる。

「たなっち」

一言オレの名を呼び黙り込む電話の相手。

「レオナくん!おはよー。どしたのー?クラブの帰りかねー?」

「たなっち、オレはオレがさっぱりだよ」

「え、オレはそんなのいつもだけど、レオナくん、まじどしたー?」


あまりにしょぼくれているレオナくんに、とりあえず話をしない?と家にご案内する。レオナくんはすぐ行く、と電話を切る。


この前よーくんの家から帰ったレオナくんは、あの後けーくんに謝られ無事復活したみたい、とよーくんから聞いていたのでほっとしていたんだけどな。


「たなっち、ごめんねこんな朝方から」


部屋に入るなり、小さくうずくまり謝るレオナくん。

「オレ、さっきまで皆とオールしてたから大丈夫だよー。それより、どしたの」

レオナくんは、眉をしかめて俯く。ぽつ、ぽつ、と話し始めながら、タバコに火をつける。


「オレ、何で帰って来ちゃったかなー。余計寂しくなるとは思わなかった」


そう前置きしてから始まったレオナくんとけーくんの友情話は、レオナくんのけーくんへの想いが詰まっていた。




中学校で出会ったレオナくんとけーくん。同じクラスになって一気に仲良くなった。けーくんはその頃すでにモテ男街道まっしぐらで先輩後輩問わず遊びまくっていたらしい。そんなイケメンのけーくんが、自分以外で唯一認めるイケメン、それがレオナくんだった。

『オレと居て遜色ない男前は玲央名だけだ。オレが唯一認めんのがお前だよ』


思春期真っ盛りで、半分混じるアメリカンな血を気にしていたレオナくん。けーくんはそんな事気にもせず誇らしげに言った。なんだかけーくんらしい。


女の子にモテだしても、自分の髪や目の色ばかりが注目される意味がレオナくんには分からない。
夢見がちな女子達から外見先行で語られるイメージ。それとかけ離れた実際の自分に違和感を感じ、少しばかり窮屈な思いをしていたレオナくん。

オレほどまでではないが、少しだけゆるい頭の持ち主ゆえ、レオナくんはけーくんの発言にいたく感動したそうな。
けーくんはただのチャラ男である。しかし、よーくんの兄上だけあって実は優しくて気が利くけーくん。
自分最高!な藤沢家の長男は、その時からレオナくんにとって唯一無二の親友となった。


『オレが喋るとだいたい皆イメージ違うって言うのよー。こんなアホとは思わないのかねえ』


レオナくんが物憂げに相談すると、けーくんははんっと鼻で笑った。


『バカじゃん。そのギャップで年上をオトすんだよ!母性本能を攻めるんだよ!お前のバカは、お前の最大の武器なの。魅力なの。お分かり?』


自信満々に言うけーくん、なんだか女にまつわることばかりだったが、


『お前のバカは魅力だ』


笑って言うけーくんに、レオナくんは再び感動した。けーくんと居る時だけは気持ちよくそのままの自分で居られた。


二人は毎日一緒に居て、コンパをしたりナンパをしたりした。レオナくんはけーくんから女の子を紹介してもらい、時には付き合ったりもした。けれど、レオナくんが一番一緒に居て楽しいのは、いつもけーくんだけだったという。


『啓、どうしよークラスの奴にさー』


レオナくんはなにかあって困ったら、けーくんに真っ先に相談した。
けーくんはチャラ男だが、気を許した人にだけは優しくてさっぱりした人なのでレオナくんのトンチンカンな相談にも毎回笑って答えてくれたという。


『バーカ!もしムカつくならそいつの女奪ってやれ!玲央名の方が断然イケてる!お前に勝てるのはオレだけだからね。玲央名、そんなアホは相手にすんな。お前の価値が下がるわ』


トンチンカンなけーくんの助言。奪うのは如何なものかオレは思うのだが、レオナくんはいつものように救われたらしい。


『オレに価値あんの?』


『玲央名、お前はまじイケてる!お前が女なら絶対モノにしてっし!バカだけどお前は本当にいい奴だし、価値ありまくりよ!』


レオナくんは、女だったらけーくんのモノになれたのかと少し寂しく思ったが、価値があると断言されてまた感無量。
ここら辺、親近感がわいてしまうなー。レオナくんてやっぱりオレの兄弟じゃないの?


そうやって毎日一緒に楽しく過ごしているうち、高校を卒業する頃にはレオナくんにとってけーくんはこの世で一番大切な人になっていた。

何人付き合っても、けーくんみたいに大切に思える人は出来なくて、イエスもノーも、けーくん次第なことがレオナくんにはたくさんあった。


けーくんの元から少し焼けた肌。整った顔。たまに触れる熱い体温。

けーくんが笑うと満たされるレオナくんの心。
けれど、すぐ彼女の所に行ってしまうけーくん。


少しずつなにかが変わりはじめて、大好きなはずのけーくんの傍に居るのがなんだかたまらなくなってきたレオナくん。


レオナくんは毎日毎日なぜなのか考えるが、どうしても納得のいく答えは出なかった。
それなのに、けーくんにどうした?と心配されれば、もう苦しみなんて消え去って、レオナくんは嬉しくて堪らなくなる。


ずっとずっと一緒に居られたらいいのに。けーくんが彼女と居る時間が堪らなく寂しく感じるようになったレオナくん。


段々なにかがダメになっていく気がしてきて、このままじゃおかしくなりそうで大好きなはずのけーくんを嫌いになりそうな自分が怖くなったレオナくん。


どうにもならない所まで追い詰められたレオナくんはDJの修行を兼ね、自分に半分流れる血のルーツを知る逃避の旅に出た。


けーくんに会ったら決心が揺らぎそうだったレオナくんは、そのままけーくんに相談もせずに、突然日本を飛び立った。

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