番外書庫
拍手御礼SS:【生徒会でお題!】萩乃海斗の場合
▼萩乃海斗
「夏…だねぇ」
強風にした扇風機の前でアイスを食べる小柄な少年が呟く。
手に持つアイスはほぼ無くなっている。
「萩乃…お前は冷房も効いてるのにどんだけ暑がりなんだ?」
呆れた様に息をつき、開いていた本を閉じた。
自室のダイニングテーブルに座る彼は、着流しを着ているからなのか扇風機に当たっていないのに涼しげに見える。
冷暖房完備のこの学園はいつの季節も快適に過ごせるようになっているのだが、それでもやはり暑さに弱い生徒はいるようだ。
「僕暑いの本当嫌い。27度超えると駄目死ぬ」
萩乃と呼ばれた少年は、扇風機と向かい合ったまま答えた。
碧色の目はどこか虚ろだ。
「あ゙あ゙あ゙ー…はよ、夏なんか終わればええねん。あかんー夏嫌いー」
金色に輝く髪を高く結い上げ、白いロングTシャツに細身のジーンズという姿はどこから見ても可憐な美少女なのだが、口から出る言葉は愚痴だ。
「関西弁出てどこかの古典教師と化してるぞ?何にキレてるんだ」
「ちーちゃん、今一緒に居るのは僕。他の男の話は聞きたくない」
普段では考えられない冷たい目線に、ちーちゃんと呼ばれた青年は困った様に眉をひそめた。
「アイス終わっちゃったー!ってか、なんでちーちゃんそんなに涼しげなの?」
食べ終えたアイスの棒はごみ箱を投げ捨てた。
不可解だと言うように、口調の戻った少年は首を傾げ、フローリングの上を四つん這いでズルズル近付いてくる。
これが長い髪の女なら確実ホラーになっているはずだ。
「俺は元々体温低いからな。これくらいの温度で丁度良いんだ」
へー、と口で言いながら少年は青年の脚へと手をやる。
「あ、本当だ。冷たい」
裾から出ている足首に手を触れる。
「ちょ、なんで足を触るんだ…!!」
少年は床に座ったまま青年の顔を見上げた。
「だって立ったら暑いし。それにしても、ちーちゃん足白いねー」
足首を撫でていた手を少しずつ上にあがっていくのと同時に、無防備な着流しの裾は割れていく。
「ストップストップ!!!それ以上は駄目!」
太股にまで上がってきた手を止める。
そのままにさせていれば確実に上半身まで上がっていただろう。
「冷たくて気持ち良いのになんで止めるのー?むしろ、気持ち良すぎて舐めたくなるくらい」
言うが早いか、赤い舌で今まで撫でていた内股を舐める。
「んぁ…ッ」
「ちーちゃんの体って、どこもかも甘い」
脚に直接掛かる息に、
耳まで赤くなった青年は慌てて足を少年から引き離した。
「これから夜暑くなったらちーちゃんの所に来るね。快眠出来る気がする」
「俺は玄関と部屋に鍵掛けて寝る事にする…」
クスクス笑う少年の語外に込められた意味を感じ、青年は益々赤くなった。
「ちーちゃんの赤い顔可愛い〜写メ写メ…あ、携帯部屋に置いて来ちゃった」
『取りに行ってくるから待ってて』と少年は立ち上がり、青年の唇を親指でするりと一撫ですると部屋から出て行った。
「暑い…俺もアイス食べよ」
青年は冷蔵庫に向かう。
夏はまだまだ終わらない。
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