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番外書庫
20000Hit*和佐見さんへ◆前編◆
《20000Hit*『如月家全員集合!』》





「たっだいまー千織さん今帰ったよーっ!!」

玄関にいる人物は、自室に居るであろう妻に聞こえる様に叫びだした。
目茶苦茶暑苦しい。

「……やっと…」


窓の外では蝉が力強く鳴いてる。
そんな下界とはかけ離れたクーラーが効く書斎で、兄さんは読んでいた本を直す為にソファから立ち上がった。

「“やっと”と言うより“もう”…だと思うけど」

前に帰って来たのは一週間ほど前。
一年家を空けるのが普通の父にすれば、ハッキリ言って異常だ。
あり得ない。

「母さん、気付いてるのに無視してるね…アレは。」

未だに聞こえてくる玄関ホールからの叫び声からすると、絶対そうだろう。
兄さんは俺と同じ顔で眉間にシワを寄せている。

「ち、ちーおーりーさぁぁぁあん!助けてぇー央渡君が“黙れ”って僕に言うよぉ」

一般の家庭教師である先生が、如月家の当主である父さんにそんな事言うわけ無いだろ…。

「……うるさい」
「そろそろ止めた方がいい気がしてきた」

屋敷中に響き渡る声を聞きながら、クーラーの効いた書斎を出た。





「あ、」
何故お前が其処にいる。
声を頼りにリビングに入ると三人で仲良く井戸端会議ならぬ、お話し合いをしていらっしゃいマシタ。

父と俺の家庭教師はまぁ良いだろう。
でも、その二人に挟まれてるのはどうみても従兄弟の光季だ。
俺の隣りからの舌打ちが怖すぎる。



「ちーちゃんっ、会いたかったよ!」
「千純元気だったかい?」
「ちーくん、こんにちは」


三人共言ってる事はバラバラなのに内容は一緒だ。所謂、異口同音。
しかも走ってくる…足並み揃えて…
その団結力を違う所で見せろっ!

「って…言うか会う度会う度抱き着くなっ」

俺の名前を別々に呼ぶ三人衆が離れると、次は隣に居たハズの兄さんが後ろから首に手を回して抱き着いてきた。
もういいや。
俺が諦める事にする。

「織也さん、ずるい」
諦めの悪い光季が膨れているが、暑苦しい上に邪魔なので放っておく。

「織也ー…千純が溜め息吐いてるゾ」

父さんが星を飛ばしながらウィンクする。
可愛いふりしても可愛くない。
むしろムカつくぐらいにカッコイイ。
そこまでいくと年齢詐欺、夫婦揃ってバケモノ。



俺達兄弟もいつか老けなくなったりするのだろうか。
…呪いを解きに神社とか行った方がいいかな…。

それに比べて…
いや、同じ位先生もある意味ではバケモノだ。
綺麗系で天才で多分運動も出来て。
…おい。
父さんはどこからこの人を連れてきたんだ?N〇SAか?NA〇Aなのかっ!?

「ちーくん勉強どうする?旦那様を奥様の所にお連れしてからの方がいいかなぁ?」

そうですね。
この状況から察するにに、そうするしかありませんね。

「千純、……早く部屋戻ろう」


俺にくっついたままの兄さんがボソッと囁く。
取り敢えず、早くこの場所、この状況から逃げっ…部屋に帰りたいらしい。

「んじゃ、母さん部屋に居るし父さん行ってきたら?」


腰に手を当ていつの間に用意されたのか、立ったままブラックコーヒーを口に近付けすすりながら聞いていた父さんは俺がそう言うと、目線を下にずらした。

「いや…だって、千織さん僕を迎えにきてくれなかったし…」

え。

「父さん、もう一回お願い」

んもーっ
と、どこぞの二丁目ママよろしく頬を膨らませ、もう一度言い直す。

「だからー、千織さんの僕への愛がなくなっちゃったから…」

さっきと内容全然違うしっ!


◇後編に続く◇

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