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23:《光差す日》





その夜夕喜は密かに玖琅に呼ばれていた


「夕喜、絶対にこれだけは約束して欲しい」
夕喜は静かに聞いていた
「絶対に門には近づかない、私達が信頼に足ると用意した家人以外の家人と他の親族には近づかないと約束して欲しい」
いつもの声音よりも更に低く威厳がある声で言う玖琅
夕喜は静にただコクリと首を縦に振る夕喜自身ここに来てから無意識の内に何かを感じたのだろう
この異様な雰囲気を・・・
それを見て安堵したのか玖琅の頬が微かに緩む
たがその時の夕喜は玖狼のそれを滅多に見られる物ではないのだと知る由もなかった


「さあ、夜も遅い。寝なさい」

「はい!」




「もう、心配は入りませんよ。 姉上」
物陰に隠れていた百合はハッとする
バレていたのか。まあ、流石に玖琅を騙せるとは思ってもいなかったが。
確かに心配はいらないだろうが、それでも心配なのだ
それが親心という物だ
夕喜は約束を破ることはないだろう
それだけは絶対と断言できる
ただ、読めないのだ。親族たちの思惑が。
紅三兄弟を取り巻いていた状態
それを今現在夕喜と伯邑たちを取り巻いている環境は同じなのだ
どんな手でくるか、全く読めない
それが、自分を苛立たせて、歯がゆくて仕方がない
焦りばかり出てきて、これでは自分でもマズいと思う
そんな事理解しているのか、玖琅は百合の為熱いお茶を淹れてくれた
「姉上、これでも飲んで落ち着いて下さい」
玖琅の淹れてくれたお茶を受け取り、少し息で冷まして飲む
「あー本当に玖琅の淹れてくれるお茶は美味しいわね」
心の中で無理だと思っても黎深に少しは見習って欲しいと思わずにはいられなかった
だが、絶対にそういう日は来ないだろう
来たとしてもそれは天変地異の前触れかもしれない


「姉上もお休みになられては如何です?」

「えぇ、そうね。そうさせてもらうわ」
百合は立ち上がりかつての自分が使っていた部屋へと向かう
そんな百合の後ろ姿を見ながら玖琅は嘆息した
ゆっくりと動いている。親族たちは気味が悪いほど息を潜め、この先は何が起こっても可笑しくない。
腹には冷たい刃が当てられ、自分たちが何者かの掌で踊らされている感がどうしても否めない
「一体、この先何があるというんだ」
幼い子供らの寝顔を思い浮かべながら、絶対に無理だと分かっていても幸福が永遠に続くようにとこの時ばかりは願わずにはいられなかった





* * *


日の光が窓から差し込み、辺りでは小鳥のさえずりが聞こえてくる
そんな中で夕喜は目覚めた
「・・・、朝?」
覚醒していない頭で懸命に考える
ここは、私の部屋じゃない・・・・・、ああ、そうだ。昨日、紅本家に・・・・。
なんとか、自分の状況が把握できた夕喜は慌てて飛び起きる。
窓から、見えた太陽は頂点にある。どうやら寝過ごしたようだ。
慌てて着替えるが、その所為か、上手く着ることが出来ない。
「あら、夕喜。起きたのね」
笑みを浮かべたまま入ってきた百合
「母様!どうして起こしてくれなかったのです」
懸命の着替えつつ、百合に抗議する夕喜。一方の百合はふふと笑いながら、夕喜の意識が自分に向いている事をいいことに、手際よくさっと着替えさせる。
「叔父様、長旅で疲れたでしょうから、そのままにとおっしゃてね」
そうも言われたらぐうの字も出てこない。
そこへ丁度良く、バンッと威勢良く扉が開けられる。
「姉上、お起きになられましたか?」
伯邑と世羅がそこにいた
「おはようございます!姉さま」
元気よく、夕喜へと挨拶をする世羅
「おはよう、て、もうこんにちわだけどね」
夕喜のその言葉に二人の笑顔はもっと深くなる
どうやら、二人とも夕喜の事を大好きなようだ
百合はその光景をみて、もし伯邑と世羅で夕喜の取りあいになった時は、世羅が負けて泣いてしまうのではないかと埒な事を危惧していた


また、別の所からその光景を見ている者がいた
玖琅だ。物陰に隠れて、見ていたのだ。
百合が自分の存在に気づいたことが分かって、直ぐにその場を離れる
大丈夫、まだ大丈夫だ
親族たちは動いていない。否、水面下では動いている。
まだ、表面にでてくるまで時間はある、どうにかそれまでには・・・・。
玖琅は薄々だが、長兄の娘である秀麗と次兄の義息子絳攸と義娘の夕喜がこの先の未来で何か大事な鍵を持っているのではなのかと思うときがあった
だが、この時の思いと考えが、後に当たるとは、その時が来るまで玖琅は知る由もなかった



この時、まだ紅州は平和だった方だ。
他州では、紫州とまでは言わないが、酷い有様だった
だが、それは時期にこの紅州までやって来る。
それは、時間の問題だ。







――――――――――
あとがき

あまり、進展しなかった・・・
あー伯邑と世羅の性格わかんねー
外は酷いけど、まだ此処は平和だよ的な事が書きたくて書いたものです
多分暫くこの調子でいきます

恐らくは・・・・


09.07.05

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あきゅろす。
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