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◆一輪の花?(エムペ版)
A


「あ、斉藤君。やっと見つけましたよー」

斉藤先輩の背後から柔らかな声が聞こえてきた。

「香山か。何か用事か?」

香山と呼ばれた生徒は、寝癖の付いた栗色の柔らかそうな髪、目尻が少し下がっていて、見るからに優しそうな生徒だ。

男性にしては少し小柄なのも手伝ってか、可愛らしい印象を受ける。

「ええ、美咲君が茶道部の部費の件で聞きたい事があるそうですよ。て、おや? そこに居るのは若林君じゃないですか。んんー? 隣の君は見たことない顔だね。若林君の友達かな?」

斉藤先輩を挟んだ状態で覗き込むようにして私達に、にこやかに話しかけてくる。

「ええ、例の転校生ですよ。今日転校してきたんですよ」

「尾崎 凛です。初めまして」

自己紹介する私に香山と呼ばれた生徒は、ポンと手を打った。

「ああ、じゃあ、やっぱり君が新しく寮に入る子だねー。僕は二年の香山 稔(カヤマ ミノル)、ここに居る斉藤君と同じ生徒会役員で、寮長も兼任してるんだ。何か判らない事や困った事があったら遠慮なく聞いてねー」

そう言って微笑む香山先輩は、まるで春の陽だまりのような温かな笑みを浮かべた。

その笑顔は、ぱっと周囲の雰囲気が華やぐような気さえする。

今日から入寮する手配になっているので、寮長なら、これからお世話になることも多々あるだろう。

見た目のまま凄く親切で優しそうな香山先輩のお陰で、ほんの少し不安が解消された気分だ。

「はい、有難うございます。今日から、よろしくお願いします」

私は出来うる限りの笑顔でそう答えた。




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