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◆一輪の花?(エムペ版)
潜入



レンガ造りの校門を潜り、校舎へと足を踏み入れた。

校舎内は、外観同様、白色を基調としており、こざっぱりとしていて、私立だけあってか清掃が行き届いている。

チリ一つ落ちていない廊下、磨き上げられた窓ガラスが眩く光って見える。

「へえ、結構綺麗な学校なんだね。ほら、男子校っていうから壁に落書きとか、窓ガラスが割れていたりとか、ドアが横倒しになっているもんだと思ってた」

「おいおい、どんな偏見だよ。それじゃ、一昔前の不良高校じゃないか」

「あ、そうか。ここって、優秀な人達が通う高校なんだよね。暴力振るったり、物壊したりはしないか」

「まあ、ゼロとは言えないんだが……」

「えっ?」

龍兄は苦笑しながら「さっ、こっちだよ」と、やんわりと私の背中を押し職員室へと案内しだした。

優等生ばかりの学校でも、それなりに色々とあるみたいだな。と、龍兄に背中を押されるがまま、とりあえず一人納得する。


目当ての場所らしき所へと到着したのと、私達の目前にあったクリーム色をした引き戸が開かれたのは同時だった。

丁度、一人の生徒が職員室から出てくる所だったようで、私達と鉢合わせのような形になる。

少し目に掛かる長さの艶やかな黒髪の間から、切れ長な目が私達を見下ろしていて、どことなく冷たい印象を受ける端正な顔立ちの生徒だった。

「斉藤先輩じゃないですか、おはようございます」

どうやら、龍兄は彼とは知り合いのようで、私の背後で軽く頭を下げているようだ。

「おはよう。……若林は今日もその姿なのか?」

「まあねーって、それは言わない約束だろう」

龍兄は声のトーンを落とし、ヒソヒソ声で抗議する。

「見ない顔だな」

だが、龍兄の抗議など全く意に介さず、マイペースに龍兄の隣にいた私へと、その切れ長な眼差しをよこして来た。

何かを見透かすように、黒曜石のような瞳で真っ直ぐに視線を注いでくる。

「斉藤先輩、俺の主張は無視ですか。あーっと、彼は例の転校生ですよ」

「あ、初めまして、尾崎 凛(オザキ リン)といいます」

突然龍兄に話を振られた私は、慌てて頭を下げた。

「二年、斉藤 修二(サイトウ シュウジ)だ」

そう簡潔に自己紹介してくれた斉藤先輩の表情は、やはりなんの感情も見て取れない。

先程から、表情が全く動いてないのだ。

怒っているのかとも思ったが、どうやらそんな感じも一切しないし……もしかしたら、感情を表に出すのが苦手な人なのかもしれない。




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あきゅろす。
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