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◆一輪の花?(エムペ版)
B


「……尾崎君も大変だな、酔狂な理事長に好かれて」

クスリと微かな笑みを浮かべた美咲先輩は「ああ」と、何かを思い出したかのように言葉を付け足す。

「尾崎君が理事長に雇われたボディーガードというのは私を含め、ここに居る香山君と斉藤君しか知らない。心配する事はないよ。この二人は信頼できる人間だ。今回の件の情報が漏れる事はないだろうから、安心してくれていい」

香山先輩と斉藤先輩もだけど、美咲先輩も信頼できる人なのだろう。

じゃないと龍兄が、一介の高校生に事情説明なんてしないだろうから。

「しかし、斉藤君に至っては、尾崎君が女性である事は知らないんだ」

「え、そうなんですか?」

「斉藤君は少しばかり堅い所があるからな、尾崎君が女性だと判ると、対応に困り果てるのは解りきった事だし……まあ、気を付けたほうが無難だ」

――斉藤先輩は女性が苦手なのかな?

とりあえず、斉藤先輩には女性である事を隠しておけって事だよね。

「判りました」

「香山君は生徒会役員兼寮長だ。生活面でのサポートを任せてある」

「何か困った事があったらいつでも頼ってねー」

香山先輩が、ふんわりと微笑む。

優しさが滲み出ているような笑顔に、私も自然と微笑み返してしまう。

最初に会った時も思ったけど、香山先輩って和む。

こういう人を癒し系っていうんだろうな。

そんな事を考えていた時、突然、何処からか盛大に硝子の割れる音が耳に入ってきた。

「――なんだ?」

美咲先輩の訝しげな声を聞きながら、私は素早く立ち上がる。

今の音、感じ的に下の階からだ。

「あ、おい、凜!」

龍兄の呼ぶ声を無視し、私は一目散に音がした元へと駆け出した。




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