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◆一輪の花?(エムペ版)
A


龍兄も追う必要ないって言っているし、今は斉藤先輩に任せても大丈夫って事よね。

「判りました」

私の返答を聞き、香山先輩は気を取り直すように椅子から立ち上がった。

「ここで話しっていうのもなんだから、こちらにどうぞ」

香山先輩は部屋の奥にあるスチール製のドアを開け隣室に私達を招き入れた。

室内は四方の壁に沿うように棚が並び、どの棚もファイルや段ボール箱といった物で埋めつくされている。

その中央に、重厚な木製のテーブルと焦げ茶色の革貼りソファーが置かれていた。

休憩室……みたいなモノなのだろうか。

それにしても、凄い量の書類やファイルだ。

積み上げられるだけ積み上げたって感じだし。

地震でも起きたら確実に雪崩れになりそうだな。

私が辺りを見回すようにキョロキョロしていると「さ、座って」と、香山先輩が声を掛けてきた。

見ると既に美咲先輩と龍兄が当然の如くソファーに腰掛けくつろいでいる。

「ほら、凜、ここにおいで」

龍兄は隣をポンポンと叩き手招きする。

「う、うん」

私は大人しく龍兄の言葉に従い腰を下ろした。

すると、龍兄の隣に座った私を、ジッと見つめてくる美咲先輩と目が合う。

露骨に見られている所為か、なんだか無性に落ち着かない。

「あ、あの何か?」

「本当にボディーガードを雇うとは……しかも女性とはね」

――あ、本当に私の事知っているんだ。

ということは、龍兄が事前に話しを通していたって事か。

横目でちらっと盗み見た龍兄は、口元を緩め自慢げに美咲先輩に笑いかけた。

「これでも凜は、かなり優秀なんだぞ。常に鍛錬も努力も怠らない。だから実力も男にひけをとらないし……なにより俺が心から信頼しているボディーガードなんだよ」

「た、龍兄!?」

恥ずかしくなるような言葉をサラリと言ってのけた龍兄は、私を優しい眼差しで見下ろす。

私は朱くなっているであろう顔に片手を当て、龍兄の視線から逃れるように顔を背けた。




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