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――ヘリポート――


三十センチ程の厚みのある鋼鉄の扉を開くと、夏の熱気と潮の香りが俺達に向かって吹き付けてきた。

外に出れば、肌を焦がす太陽の光が容赦なく降り注ぎ、室内に居た時には感じる事がなかった暑さに、じんわりと汗が滲むのを感じる。

学校のグランドよりも、更に一回り広い敷地には、既にヘリコプターが一機着陸し、周囲には、作業服を着た整備士達が、忙しそうに仕事をしていた。

地面に降り立ったヘリコプターの傍には、懐かしい。と、まではいかないが、久しぶりに見る顔ぶれが並んで立ち、上空を見上げている。

何を見ているのだろう?と、彼らの視線を辿り、空を見上げてみると、青空に黒い点が浮かんでいた。

それは次第に近付いているようで、低く鈍い音が、徐々に大きくなってくる。

「美咲先輩、香山先輩」

俺の呼びかけで、二人は俺達の方へと振り返った。

「幸田君、久しぶり」

「皆、元気そうだねー」

白いシャツの下にダークグレーのTシャツ、黒っぽいデニム姿の美咲と、ブラックのジップパーカーの下にピンクのタンクトップ、デニムといった姿の香山が、潮風に髪を揺らしながら笑う。

「お久しぶりです。美咲先輩も香山先輩もお元気そうでなによりですよ。ところで、アレって……」

俺達は再び視線を上へと戻した。

上空のヘリコプターは、既に点から、輪郭が判る程まで近付いてきている。

「うーん、どうやら、あのヘリも、ここへ来るみたいだな」

秋月は軽く背後を振り返り、少し離れた場所にいるケイトに視線を向けた。

ケイトは、作業員の人達と、難しい表情をしながら、何かを話し合っている。

「何かあったようだな」

斉藤が、ポツリと呟き天を仰ぐ。

ヘリコプターは、轟音を立てながら、俺達のほぼ真上までやってきた。

何度か旋回すると、ゆっくりと機体が降下しだす。

身体ごと吹き飛ばされそうな突風が吹き荒れ、服や髪が引っ張られるような感覚に思わず目を瞑る。

次第に風が緩み、大きな機械音も、小さくなってきた時、ヘリコプターの入り口が開いた。

入り口には、白のヘンリーネックのTシャツにベージュのズボンを穿いた細身の青年が立ち、少し長めの黒髪が風に舞っている。

飛び出すように地面に降り立った青年は、わき目も振らず、真っ直ぐに、こちらに向かってきた。

青年が、俺達に近付くにつれて、彼の顔が端正な造りだという事が、見て取れる。

男性とも女性ともつかない、不思議な顔立ちだが、筋の通った鼻や、くっきりとした二重の目に、均整の取れた唇が、絶妙なバランスで配置されていた。

美咲も奇麗な顔立ちで中性的な方だが、美咲のそれよりも、彼は、ほんの少し女性的かもしれない。

青年は、呆けている俺達を通り過ぎ、その先のケイトの前までいくと、ピタリと立ち止まる。

ヘリコプターのエンジン音等で未だ騒音が絶えない環境の中にも関わらず、静かだが、怒気を含ませた彼の声が、俺達の耳に入ってきた。

「凛は何処だ?」




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あきゅろす。
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