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「再会パーティ?」

「うん。さっき皆で、話してたんだ」

テーブルを挟みつつ円陣を組むように、それぞれ椅子に腰を落ち着けた頃に、先程の秋月の提案を凛に告げた。

「パーティって言っても、そんな大袈裟なものじゃなくて、お菓子とか摘まみながらさ、話をするだけでいいんだけど」

秋月は「どうかな?」と、輝くような期待の眼差しを凛に向ける。

ここは、尾崎グループ所有の建物なので、尾崎一族の凛が賛同してくれた方が、準備やら場所やらの手配面からいって、何かと都合がいい。

それに――やっぱり凛が居てこその再会パーティだ。

凛が居なければ、今この時、俺はこの世からいなかったかもしれないのだから。

「パーティか……楽しそうですね!」

本当に楽しそうに笑う凛の笑顔は、可愛らしくて見飽きる事がない。

この笑顔が毎日傍で見られるのなら、なんだって出来る!と、本気で思えてしまう自分は、心底、凛に惚れてしまっているようだ。

「じゃあ、準備の手配を」

カツっと、音を立てて、凛の前にあるテーブルの上に紙コップが置かれた。

「私が、手配しておくわ」

声の主と紙コップを置いたのは、ケイトだ。

いつの間にか、凛の飲み物……色を見る限りミルクティーを取りにいっていたようで、二十種類以上のメニューを取り揃えている、あの自販機もどきから凛の好きな飲み物、ミルクティーを選んでくるあたり、流石、凛を大切だと言い切っただけの事はある。

凛の好みは把握済みのようだ。

きっと、俺の知らない凛の情報も沢山持っているんだろうな。

レアな情報とか教えて欲しいけど……男性嫌悪症のケイトが男の俺に教えてくれる事はまずありえないだろう。

天地がひっくり返らない限り、絶対に教えてくれなさそうだ。

「有難う。ケイト」

紙コップを手にし、微笑む凛に、ケイトは惜しげもなく全開の笑顔を浮かべた。

そして、俺達の方へと視線を向けると同時に、その表情を瞬時に消し去る。

「では、そろそろ……香山様、美咲様。部屋の方へ御案内致します。他の皆様も一度、部屋の方へ着替えに行かれてはどうです?」

事務的な声色で告げ、再び、凛に目線を戻すと、先程と同じ微笑を見せた。

なんとも見事な早業だ。

まるで、仮面を瞬時に変えるかのようにも見える。

「凛はソレを飲んでから、社長のもとへ行きなさいね」

それはつまり、もう暫らくここで休憩しなさいという、ケイトの凛に対する暗黙の気遣いが、含まれているのだろう。

優しい気遣いと笑顔を向けるのは凛だけで、俺達には、その優しさは向けられた事は……ないような気がする。

ケイトは、俺達の生活のサポートという仕事は、完璧にこなしてくれているが、あくまで仕事であって、そこに私情の介入は一切無い。

俺達が男だからという理由からなのか、もともとケイトは仕事に私情を挟まない性質なのかは判らないが、トコトン徹底しているのは間違いないようだ。

なんだかケイトも、前途多難の要因の一つになるような気がして……怖い。





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