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EVENT
春の足音 2012ひな祭り

 
 
 
2012年3月3日
ひな祭りネタ。
部室にて。
キョン視点。
 
 
 
■春の足音
 
 
 
「キョン、明日は何の日?」
 
部室に入ってくるなり
俺の眼前に指をつきつけてきたのは、
何を隠そう
我等が団長様だった。
 
「明日ぁ?
ふん、年末テストの最終日だ」
 
最終日というのことは
今日もテストだったし明日もテストがあるということだが…
なぜ俺達は
揃いも揃ってこんなとこに集まってんだろうな。
 
健全で得体の知れている部活に入部している皆様は、
とっくの昔に帰宅している。
 
なのに成績超低空飛行しているはずの俺は、
変態超能力者と向かい合ってオセロをしていて、
これからハルヒの戯言に
耳を傾けなければならない。
 
こんなんでいいのか、
俺の高校生活はよ。
 
「はぁ?
あんたがそんなにテストに関心があるとは
思わなかったわね。
ほーらっ、もっと重要なイベントがあるじゃない!!
ねっ?みくるちゃん」
 
「ひ、ひな祭り…ですよね?」
 
仁王立ちしたハルヒは
俺が部室に来た時から
英語の教科書と必死で睨み合っていた朝比奈さんに、
突然矛先を向けている。
 
「そうよ!!
3月のイベントなんて、ひな祭りくらいしかないじゃない!!
もう、馬鹿キョンっ」
 
ちっ…わかってたよ。
2月のカレンダーをめくった時から、
またハルヒが騒ぎ出すんだろうなとは
容易に想像がついてたしな。
 
「俺達には関係ねーだろ」
 
「そりゃキョンと古泉くん単体なら関係ないかもしれないけど、
SOS団としては、
放っておけないイベントよ!!
SOS団の男女の比率は
女の子のほうが多いんだしっ」
 
1人差じゃねーかよ。
 
「で?お前は俺達に何をさせようってんだ?
朝比奈さんにコスプレでもさせるなら、俺達はすぐに部屋を出ていくが」
 
「コスプレは明日よ。
今日はまだメイドでいいわ。
それに、今回は有希にも着せてあげるつもりだから」
 
させんのかよ。
 
ヒッ、と可愛らしく肩を震わせている朝比奈さんには悪いが、
とても楽しみだ。
 
淡々とハルヒを無視している長門のコスプレも新鮮だし。
 
「今日はね…これよっ」
 
がさがさと鞄を漁ってハルヒが出してきたのは、
モールだの折り紙だの、
やたらキラキラしたもの達だった。
 
「部室の飾り付けですか」
 
今まで黙っていた古泉が、ビーズ玉をつまみながら言った。
 
「そうよ!!
折角のイベントだもの、ちゃんと祝ってあげないと。
だからね、今日は解散っ」
 
「…はぁ?」
 
飾り付けするんじゃないのか?
急に解散って。
まぁハルヒの意味ありげな含み笑いを見れば、
純粋な意味で解散ではない
ということくらいわかる。
なんかあるんだろう。
 
「あたしは鶴屋さんとこに行って、
桃の花をもらってくるの!!
で、その後みくるちゃんと有希の衣装も選びに行く予定だから」
 
で、俺達は帰っていいと?
 
「だーかーらっ、
あたし達は忙しくて、
部室の飾り付けが出来ないってわけ。
ってことで、キョンと古泉くんよろしく」
 
「全然解散じゃないだろ」
 
「解散よ、一応。
飾り付け終わったら自由に帰ってくれていいから。
サボったら承知しないわよ」
 
俺と?古泉で?
2人で部室のキラキラキンにしろってのかよ。
何が悲しくてそんなことしなくちゃならんのだ。
 
古泉に反論しろという視線を一応送るが、
こいつがそんなことするわけない。
ハルヒ専属イエスマンだしな。
 
 
と、いうことで、
俺達は2人で細々と部室の飾り付けをすることになった。
 
 
 
「だぁぁぁーっ!!
なんだこれ、出来るか!!」
 
3月といっても、
まだ日は長くない。
そろそろ日が沈み始めた頃の部室で、
俺は折り紙と格闘していた。
 
「落ち着いてやれば
ちゃんと出来ますよ」
 
ハルヒ希望で、
俺達は折り紙でひな人形を折っていた。
 
向かいの席の古泉が余裕でお雛様を折っているのが釈に触る。
俺のおだいり様はどうなってんだ、これ。
 
「無理だ無理無理。
もう目も肩も痛いし」
 
「なに年寄りみたいなことを言ってるんですか。
ほら…こことか、
角があってないからですよ。
もう少しきちんと折れば出来ますから、
完成させてくださいよ」
 
お前にだけは
きちんとしろとか言われたくなかったな。
 
お前の部屋の状況を
皆に見せてやりたいぜ。
シンクだけはピカピカだがな。
 
「あ゛ーもう出来ん!!」
 
「どうしてですか、
手順通りにやれば出来ますよ」
 
絵だけ見ても、立体に折れる折り紙は折れない。
 
「僕が見ましょうか」
 
無理だ無理だと騒いでいると、
古泉がガタリと立ち上がり
俺の隣に座った。
 
「ああ、頼む。
俺は飾り付けしてるから」
 
「違いますよ、あなたもやるんです。
僕が教えますから」
 
「いいって、
お前がやったほうが早いに決まってんだろ。
俺は他やっとくって」
 
出来たら自由解散なんだし、
それなら早く終わらせてとっとと帰りたい。
 
「だめです。
一緒にやります」
 
ところが古泉は、
頑として譲らない。
こんな頑固な古泉も久しぶりなような気がする。
 
「なんでだ、理由を言え」
 
「なんでって…
最近、2人きりなんて機会、
なかったじゃないですか。
…近くに来て下さいよ」
 
立ち上がろうとしていた俺の腰を引き、
パイプ椅子に戻される。
 
「おま…っ部室だぞっ!!
変なことすんなっ」
 
「変なことってなんです?
別に何も変なことはしてないつもりですが。
してほしいのなら、
してさしあげますよ?」
 
「いっ、いらん!!」
 
古泉が変態だから悪いんだろ。
あいつとのベッド事情を知っていれば、
俺の今の失言も理解してくれるはずだ。
 
「ほら、まずここを折って…
違いますよ、谷折りです。
そう、次はそっちを、」
 
教えてくれるのはいいが、
耳元に息がかかって
何とも言えない状況だ。
むかつくくらいの良い声で耳元で喋ってくるんだぞ…
 
すいませんもうやめてくださいといった感じだ。
 
「キョン君、聞いてます?」
 
「ぅ……えっ?
あ…悪い、何だっけ?」
 
キョン君、という呼び方に背筋に何かが走る。
この呼び方は、
二人きりの時だけ…
つまり、そういうことをする時だけであって。
 
…いかんいかん、
何考えてんだ俺は。
古泉と付き合ったせいで、
俺まで変態になっちまったか?
 
「ふふ…どうしました、
何だかボーッとしてますよ。
何を考えていたんです?」
 
お前のことだ、
なんて死んでも言いたくない。
 
「あなたが言いたくないなら、良いですが」
 
お?
こいつのわりには、
意外と素直に諦めたな…
と思った途端、
 
顎を取られ、口づけられた。
 
「んぅ…!?…っ」
 
触れるだけのキス。
3秒もせずに解放されたが、
触れた唇は勝手にジンジンと熱くなっている。
 
「なに急に…っ」
 
「いえ、何となく…
僕以外のことを考えていたら、
と思うと、
抑えがきかなくなりまして」
 
「…ふん…、嫉妬かよ」
 
「ええ、そうかもしれません」
 
…即答っすね。
 
抑えがきかないなんて、
古泉らしくない。
こいつは自制の塊だ。
ベッドの上では少々箍が外れることもあるが。
 
疲れてんのかね、こいつも。
 
「なぁ、今日この後、
なんか用事あるか?」
 
「え…いえ、ありませんが」
 
「お前ん家行って良いか?」
 
いつもいつも、
古泉の家に行くのは、向こうから誘ってきた時だけだ。
自分から言い出したことなんて
一度もなかった。
 
「…えっ、あ、はいっ!!
喜んでお迎えしますよ」
 
 
ただなんとなく今日は…
古泉のこの嬉しそうな顔が見たくなっただけだ。
 
 
 
――――
 
ひな祭り…
と言いながらの
部室でイチャイチャ。
イベントネタ…?
 
 


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