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僕と彼女の短い時間(短編)
よんぺーじ
 あと五分で数学の授業が始まるのにどうしたんだろう。
 「一輝ぃ〜なんか転校生の子すごい顔で出て行ったけど何があったの?」
 一個下の女友達は心配そうに喋り掛けてくる。
 俺の学校は人数少ないため全学年一緒の教室だから歳が違っててもおなじクラスになる。
 「うーんわからないけどお父さんそんな子に育てた覚えありませんって言ったら…」
 俺は冷静にさっきのことを振り返った。
 悪い事してなくね?
 「とりあえず呼びに行った方がよくない?授業遅れちゃうし」
 「わかった、じゃあ呼びに行ってくるよ。なぁどこにいるかわからないから一緒に……」
 「面倒くさいから一緒に探さないよ」
 はぁ〜じゃあ一人で探しに行くか。
 俺は急ぎ足で教室を出た。
 探しにでて自分が授業遅れたら本末転倒だしね。
 俺はまず玄関を確認する、彼女の下駄箱に靴があるって事はまだ学校にいるらしい。
 学校にまだいるならすぐ見つかるな。
 この学校は小学生が二階、中学生が三階で勉強している。
 三階まであるとは言ったものの。それぞれ階の面積が狭いのだ。
 ちなみに高校生の一階は理科室、教室、玄関しかない。
 わざわざ小学生、中学生の教室に行くことは無いだろうし、実技教科で使われる教室は鍵が閉めてある。
 ということはどっかの階のトイレか屋上だろう。
 自分が行けるのは屋上しかない。
 女の子が一緒にいれば女子トイレも調べられるんだけど……
 時計を見るとあと三分しかないしどうせ無理か。
 俺は全力疾走で階段を上がる。息切れる。結局歩く。
 以上三つのステップを踏み屋上の扉の前にたどり着いた。
 正確には扉の前で止まった。
 なにか声が聞こえたのだ。
 (父さん、母さんどうして…どうして…私貧乏でも良かったのに…自殺なんて……)
 っえ!?父さんが自殺…?
 じゃあ俺が言ったことって……?
 すごい顔って泣きそうな顔だったのか……
 物凄い罪悪感が俺を襲う。
 混乱と共に目の前が真っ暗になる。色んなことが交錯しまっくっている。
 だから屋上の扉に座って寄りかかっていた雪ちゃんが立ち上がった事もわからなかった。
 ………もちろんガラス越しに俺の顔を見られたのも。
 我に帰ったのは雪ちゃんが俺にビンタしてからだった。
 「自分が泣かせた女の子なんだから何かしなさいよ」
 「ゴメン…」
 おそらく謝罪を求めてたのだろう。
 「違う、あんたなんで泣いてたかわかるんでしょ?」
 一体俺に何を求めてるんだろう。最低な俺に。
 「なぐ…さめて…よ」 彼女はボソッと言った。意外なことばだった。
 傷つけられたやつに慰めてもらいたいなんて。
 しかしそれは俺にとって最高の罪滅ぼしだ。
 授業なんてどうでもよかった。チャイムの音も関係ない。

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あきゅろす。
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