Congratulations.
アメリカから遠く離れた異国の地に届いたその報せは、当たり前といえば当たり前なのかもしれない。
だって、それ以外の結末なんて、予想できなかったから。
それでもその報せは、皮肉れたこの胸に、言葉では言い尽くせないほどの安堵をもたらす。
そして…暖かいものが頬を流れて落ちる。
「チェス」
うるんだ瞳の先で、マイザーが微笑んでいるのがわかった。
マイザーらしい、本当に穏やかで、ただ純粋に喜びを表している笑顔。
「良かったですね」
私は何も言えなかった。
止まらない涙と溢れ出る想いが、全ての言葉を妨げる。
彼の言葉に、私はまるで本当の子供のように、何度も頷くことしか出来なかった。
鼻をすすりながら、涙を拭いながら…そして、一通の手紙をしっかりと握りしめながら。
送り主は、フィーロだった。
内容は、マルティージョファミリーの近況報告や、最近のアメリカの状勢。
そして、もう一つ。
彼とエニスが、ついに結婚したという報せ。
彼らしい淡々とした文章で書かれていたそれ。
しかし、一緒に送られた、タキシードとウェディングドレス姿の、最高の笑顔の二人の写真を見れば、いかに彼らが幸せかは、すぐにわかった。
お互い寄り添いあって、ほんの少し顔を赤らめながら笑う二人。
そんな彼らを見ていると、昔失ったはずの感情が心の中に沸いてくるのがわかった。
他人の幸せを素直に喜ぶという、感情が。
本当に、私はただ嬉しかった。
彼らが結ばれたということが。
そしてそんな彼らを祝福できる心を持てた自分自身が。
拒んできたはずの気持ちだった。
他人と喜びを共有するなんて。
でも、私はいつしか、それがどんなに素晴らしいものかを知った。
いや…正しく言うなら、教えてもらった。
今日まで出会ってきた、多くの人によって。
それがアイザックやミリアであり、マイザーであり、マルティージョファミリーの人々であり、そして…この写真の中の二人であるのだろう、きっと。
涙はまだ止まる気配を見せてはくれない。
でも今の私はそれでも良かった。
理由はわからない。
でもこの写真が、マイザーの優しい眼差しが、言っている気がした。
『それでいい』、と。
―――ああ、私はなんて幸せなやつなんだろう。
もう一度写真に視線を落とした。
その時私は、自分が笑っていることに気付いた。
まるで彼らに微笑みかけるように。
そして私は心の中でそっと呟く。
―――おめでとう。
短い、それ故に最大級の祝福の気持ちを込めたその言葉を、心の底から彼らに。
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