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恋人がサンタクロース

「フィーロさん、あれ、何ですか?」

クリスマスに浮かれるマンハッタンの大通り。
赤と緑のリボン、カラフルなイルミネーション、巨大なクリスマスツリー…宝石箱のように輝く街中を歩いていると、エニスがそう問いかけてきた。

「…あれって?」

エニスの指差した先にあったのは…。

「ああ、あれ?…サンタクロースだよ」

「…さんたくろーす?」

おそらくどこかの店の宣伝をしていると思われる、従業員達。
皆同じように赤と白のコートを身に纏い、道行く人達に声をかけたりしている。
この季節ならば見慣れた光景だが、エニスにはそれが珍しいらしい。

「…もしかして、初めて見た?」

「ええ。変わった人達だなって…」

「そっか。…あれだ、なんていうか、クリスマスの夜にプレゼントを届けにくるって言われてる爺さんだ」

「そうなんですか、プレゼントを…」―――まぁ、子供にしか通用しない、絵本の中の話だけどな…。
そう言おうとした時。

「じゃあ、私にとっての『さんたくろーす』はフィーロさんですね!」

―――…はい?
目が点になるかと思うくらいの、衝撃。
しかし次の瞬間…俺はその目を大きく見開くことになる。

「フィーロさんは私に、素敵な居場所をくれたんですから」

そう言うエニスの顔は、柔らかかった。
どこまでも穏やかで、優しい表情。

無論そんな笑顔に俺が平静を保っていられるはずがなく。

「…っ!」

「ど、どうしたんですか!?顔が真っ赤…まさか、風邪を…」

「ち、違う!何でもないんだ!」もしかしたらサンタのコートよりも真っ赤になりながら、俺は思う。



―――彼女だけのサンタクロースか。悪くない、かも…。



今年は素敵なクリスマスになりそうな予感がした。



(恋人がサンタクロース!
背の高いサンタクロース!
冬の街から来た)



あきゅろす。
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