[携帯モード] [URL送信]
#ランドセル(一護/光星番外編/1前)














それは権兵衛が手術を終え無事に小学校にあがり小学二年生になる年で、遊子、夏梨と学校に行くのを楽しみにしていた。




でも権兵衛の病は思ったよりも深刻で親父も母さんも悩んだ末、権兵衛は遊子と夏梨の入学式に出れず、また病室で毎日を過ごす事になった





その時俺は六年生。


権兵衛の病気の深刻さも重々感じていたし、何より権兵衛があんなに大好きだった学校に行けなくなるのだ、ということが俺も悲しかった。






それを感じているのは俺だけじゃなかったみたいだった。





*********






親父と母さんが権兵衛のことで医者に呼ばれ、権兵衛の病室には俺たち兄弟全員が集まっていた。



いきなり遊子が権兵衛横へ行き笑顔でこう訊ねた






「権兵衛にぃは学校にいきたい?」




遊子以外の俺、夏梨、権兵衛はいきなりのことに驚いていると権兵衛は笑顔で





『え?うーん、でもあんまり病院からでちゃいけないって…だから行かなくてもいいかなー。遊子たちも遊びに来てくれるしね!』





と返す。


俺と夏梨は黙ったまま。




「でも権兵衛にぃは元気だよ?」

『う、ん!元気だよ、遊子よりも元気!』




そうフワリと笑う権兵衛に俺は何とも言えない感情が浮かんだ。




「遊子の方が元気だよっ!だって小学生だもん!」


ニッコリと笑う遊子に笑顔で返す権兵衛






「遊子!」


「どうしたの?夏梨ちゃん?」




遊子と夏梨は小学校にあがった。遊子はそれが嬉しくてたまらないのだ。


まだ権兵衛がどんな状態なのかを知らないから言える無邪気な言葉。



遊子にはなんの悪気もない。



ただ夏梨が同年代の子よりもしっかりしていて権兵衛の病気のことを知っていただけのこと。




『遊子も夏梨もあしたからランドセルで学校だね!』


「……うん」




夏梨は気付いていたんだろう。権兵衛が学校に行くことが無いのを






「夏梨ちゃん?」

『夏梨、』

「…遊子!夏梨と一緒にジュース買って来てくれ、」


「、わかった。行こう、遊子」

「う、うん!権兵衛にぃ待っててね!」


『うん!』



遊子の手をひき病室をでていく夏梨。病室には俺と権兵衛。






「権兵衛…」


『遊子にウソついちゃった、』

『、行かなくてもいいかな、なんてウソだよ、…学校…行きたい』


泣くのを我慢しているのか両手をギュッと握り締め俺に話す権兵衛。



「権兵衛、」



俺はその手を握り、抱き締めてやる事しかできなかった。





病室の床頭台横には一年しか使われていない黒のランドセルがかかっている。




俺のとは比べ物にならないくらい綺麗で傷一つなくて…―――








ランドセル











もう使われることはない――
------

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!