卯ノ花姉弟シリーズ
蝉時雨
ミーンミンミンミン
蝉が忙しく鳴く八月のある日。
俺はふと、昔のことを思いだした。
あれは俺と修兵がまだ院生だった頃の話。
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「おい、尊!話聞いてんのか?」
『聞いてる、聞いてる』
修兵は優等生ってことで院内でも有名で、俺は“卯ノ花隊長の弟”ということで入学当初からいろんな意味で目を付けられてた。
お互いに有名と言われるもの同士意識するのにはそう時間がかからなくて、たまたま成績も一緒くらいで同じ学級になった俺らは毎日一緒に過ごすようになって居た。
『あー、あの子。』
「ん?」
『ほら、今隠れちゃた子』
「…隠れたんなら俺見えねぇよ」
『そっか。』
「…」
『…』
「なんだよ、」
『…なんでもない。あ!修兵、授業終わったらさ、氷食べに行こうよ!美味しい甘味処見つけちゃったんだよね〜』
「おう!いいぜ、最近暑いしなー」
こんな他愛もない会話を繰り返して毎日を過ごしてた。
俺には修兵しか友達なんて呼べる人いなくて、修兵との時間がすごく貴重で楽しかった。
『ねっ!美味しかったでしょ?』
「美味かった!にしてもよ、尊は何でこんな路地の方にある甘味処知ってんだ?」
めったに来ねぇだろ、こんなとこ。
そう修兵が言うとおり、ここは人気の少ない路地。
だけど危ない感じじゃなくて近所の人みんなで仲良く生活してるんだろうなあーって、雰囲気から解るような場所。
『ああー、…うん』
「?どうした?」
『いや、んーとね、この間…姉さんと、うん』
院生の頃の俺は姉さんがいることで周りから距離を置かれたり、逆に付きまとわれたり…怖がられるなんてことも良くあって、姉さんに連れてきてもらった!なんて言ったら修兵にも変な風に思われるなんて考えてた。
「姉ちゃんと来たのか!尊ほんとに仲いいよな!」
普通の修兵。
俺はどんな言葉が返ってくるか身構えてたもんだから拍子抜け。
『あ、あのさ!前から思ってたんだけど、修兵って変だよね?』
「は?」
『だって…普通驚くじゃん。“卯ノ花隊長と来たのか!?”とかさ…、』
「尊は?」
『へ?』
「尊はそう言う風に思って欲しいのか?俺に?」
『!まさか!逆だよ、普通にしてくれる修兵がいい…』
「じゃあいいだろ、尊は尊で卯ノ花隊長は卯ノ花隊長。んで、卯ノ花隊長とお前は普通の姉弟だろ?」
そう笑う修兵に俺は心が熱くなったのを覚えてる。
修兵と友達になったのも修兵が“普通”に接して来てくれたから。
「それに、今は院の外だし、俺が隊長を気にしなくてもいいだろ。」
『!っうん!やっぱ俺、修兵好きだわ!』
「な///!?」
『さ!かえろー!』
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『……懐かしい……』
修兵とは今でも仕事仲間で大親友。
『あ、修兵だ。』
俺の部屋に近づく霊圧は俺の大好きな霊圧で
『甘味処でも行くか』
俺はその霊圧に向かう
修兵は俺が出てくるのを感じたのか、部屋の前で待っててくれる。
暑い日に熱い友情を感じた、なんて言ったら大袈裟かも知れないけど、俺にとっては修兵の存在が大事だって解った日だから…
『よしっ!今日は俺がおごろー!』
end
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『しゅーへー!(ガバッ)』
「うおっ///!?ど、どうした?」
『やー、昔の事思いだしてさ、俺やっぱ修兵大好きだなって!』
「なっ///!!〜〜お、俺もっ『さ、甘味処行こうぜ!今日は俺の奢り!』……あぁ(聞いてねぇ…ま、いいか!)」
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