卯ノ花姉弟シリーズ
壮大な美しさ 後
京楽隊長に抱えられて(お姫様抱っこ)着いた先はあまり見たことのない場所。
「京楽隊長!いきなり飛び出してどうされたんで…尊!?」
まず声をかけて来たのは八番隊副隊長である伊勢副隊長。
『ど、どうも…』
今の状況が少し恥ずかしくて、あまり顔が合わせられない。きっと今俺の顔は赤い。
「どうも…って、なんで尊が京楽隊長に捕まってるんです」
京楽隊長をジトーっとした視線でみる伊勢副隊長に京楽隊長は観念したのか俺の足をそっと地につけた。
「捕まってる、なんて七緒ちゃんもヒドいなー。尊君がいた方がより美しく感じるかなって思ったんだけど…あれ?七緒ちゃん、尊君いない方がよかった?」
美しく?
何のことだろう…
伊勢副隊長は俺がいない方がよかっ「いない方が良いなんていつ言いました?!」…いても良いみたいだ。
けどまだ頭がついていかない。
「でしょう?何たって尊君は僕らのアイドルだからねぇ」
「あの、隊長。尊の頭に“?”が浮かんでるんですけど…何も言わずに連れてきたんですか?」
「うん。」
「うん、って…はぁ」
京楽隊長の気の抜けた返事に溜め息をつく伊勢副隊長。
副隊長はどこも大変なんだな、真っ先にイヅルの顔が浮かぶよ(苦笑)
『あの、俺なんでここに?』
「あぁ、ごめんね。尊君、アッチ見てごらん?」
そう言った京楽隊長の指先を辿ると
『う、わぁ!』
「許してくれるかい?」
『許すだなんて!すっごく…きれい…』
そこには大きく綺麗な桜の木
『こんな場所、あったんだ…』
あまりの綺麗さについ見入ってしまう
「気に入ってくれた?」
『はいっ!』
「隊長がどうしてもって言われるから花見をしてたの」
『お花見ですか…絶景ですもんね!』
そう言うと京楽隊長と伊勢副隊長は目を合わせクスリと笑んでいた。
『あの、俺なんか変なこと言いましたか?』
ただ桜が綺麗だ、と言っただけのような気がするのだが…この2人は何がおかし
いのだろう。
「いやいや、違うんだよ、」
「変なことなんて言ってませんよ、」
否定の言葉を返してくれるものの顔はまだ笑っている
『えー、でも顔が笑ってます、』
「いやいや、実はね…―――」
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『――――…そんなことがあったんですか、…京楽隊長!俺、今から行ってきます!』
「うん、そうしなよ」
そう柔らかく微笑んでくれる京楽隊長と伊勢副隊長。
夜も更けてきて、いきなりの訪問に迷惑がられるかもしれない。
でも、一刻も早く顔を見せたかった。
走る俺の掌にはピンク色の花弁が握られている―――
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「実はね、浮竹の検診にきた卯ノ花が“忙しく働く弟の笑顔をしばらく見ていない”って零したらしいんだよ。
桜咲くこの季節に綺麗な桜を見る暇もないんじゃないか、ってね。桜を見ると尊君が死神になった日を思い出すんだって。…一緒に桜を見たい、尊君の笑顔が見たい、無理だけはして欲しくないんです…って言ってたらしいよ」
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