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手を繋ぐこと



手を繋ぐこと



最近は、冷え込む日が続いている。
昨日の帰りは、ちらほら雪が舞っていたくらいだ。

「はー寒っ……」

手のひらに息を吹きかけると息が白くなっていた。
空を仰ぎ見るようにすると、ひらひらと白い雪が舞い降り始めた。

「雪、降ってきた……」
「昌浩?何やってるんだ?」

俺は空から視線を落とすとそこには、今一番に思い浮かべた人物が立っていた。
去年のクリスマスにプレゼントした赤いマフラーを付けているこの男は、俺の家の隣りに住んでいて幼なじみの紅蓮。

「風邪ひくぞ」

そう言って歩き出す紅蓮の隣に並んで歩く。
俺はちらりと隣りの背の高い紅蓮の様子を伺う。
相変わらず平気そうな顔をしているが、手をポケットに突っ込んでいることから寒いのだと知る。

「寒いっ!」
「あぁ……」

口で寒いと言ったところで何もならないことぐらい重々承知の上での発言だ。
天候ばかりはどうしようもなく、家に帰る歩調も自然と速くなる。
紅蓮とは一歳しか違わないのに俺との身長差は縮まるどころか開く一方だ。

「手、冷たい……」

聞こえるか聞こえないかの声で俺が呟くと紅蓮は手を差し出してきた。
俺は一目も気にせず、その手を握った。
照れくさいけど、その手があまりにも温かかったから離せなくなる気がした。
悔しいくらいに。
そう思ったのも束の間。
紅蓮は手をコートのポケットに突っ込んだ。
もちろん俺の手も一緒にだ。

「な、何入れてるんだ?!」
「何って……手」
「そうじゃなくて!何で……っ」
「冷えるだろ?」
「うっ……確かに……」

確かに今日みたいな雪の日は冷える。
手袋をしていない俺の手は氷のように冷たかったわけで、正直助かったかと言えば助かったわけだ。

「……恥っ」

そう思ったが、やはり紅蓮の優しさは嬉しかった。
こういうのなら、たまには手を繋いでもいいと思ったのは紅蓮には内緒の話。
俺は紅蓮にはどうしようもなく甘いんだ。


*END



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