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俺と君、赤い刃



俺と君、赤い刃



俺は初めて愛しい人に刃を向けた。
理由なんてない。
そこに理由があるというのなら、それは俺の醜い心。
俺のものにならないなら、全部壊してしまえばいい。
そんな身勝手なエゴからの行動。

「しょ、さ……っ」

コナツは驚いて大きな目をさらに大きくした。
そりゃ驚くよね、さっきまで普通に会話してたんだから。

「……ど、して……っ?」
「コナツが悪いんだよ?」

俺はコナツの心が、身体が、全部が、欲しかったのに。
コナツが他の人に気を許したから、今までの関係が壊れたんだよ。

「だからね、死んで?」

コナツの顔が恐怖で染まっていく。
喉に突きつけた刀の刃をゆっくりと首筋に当てた。
真っ赤な血が、少量溢れて首筋を流れる。
コナツの目から涙が零れて、刀の刃に落ちた。

「いや、です……っ」
「駄目だよ、許さない」

コナツの光のない瞳が俺を見た。
揺れる瞳、歪む表情、俺からの裏切りはそんなに苦しいのかな。

「何か言い残したことある?」

俺が本気だということを知ったコナツは、涙を流しながら笑った。
愛しい君の頬に口づけをひとつ。
さよなら、コナツ。

「ばいばい、コナツ」

刀を斜め左に振り下ろした。
飛び散る赤。
崩れ落ちていくコナツを抱きとめた。
弱い呼吸音が、コナツの命を繋ぎとめていた。

「しょ、さ……好き、で……た」

小さく、本当に小さく掠れた声でコナツは言った。
伸ばされた手は震えていて、抱きしめた身体はまだあたたかかった。
ふとコナツの手から力が無くなり、ゆらりと俺の手をすり抜けていった。

「コナツが……いないっ」

この瞬間は、きっと夢じゃない。
愛しい君の命がこの世から消えた。
もう俺の前で笑ってくれない。
もう俺を見ることなどない。
もう、君は動かない。
だって、俺がそれを望んだのだから。

「コナツ、ずっと一緒だよ」

どこまでも、君を愛するよ。
君が愛しいから、君だけが欲しいから。
俺と君、赤い刃の絆で結ばれる。



*END



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