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君の口から魔法の言葉



君の口から魔法の言葉



誰もいない放課後の図書室。
机に向かった顔を上げれば、愛しい君。
だけど、君は俺を見てくれない。
どうして?
俺はこんなに君を見ているのに。

「昌浩」

堪えられなくて、愛しい君の名を呼んだ。
でも、君はまだ気づかない。
早く俺に気づいて、その瞳をこっちに向けてほしいよ。

「昌浩昌浩昌浩昌浩昌浩」

いつしか呪文のように君の名前を繰り返し呼んでいた。
君の瞳が追っているのは俺じゃなくて、本の文字。
一瞬たりとも俺を見たりしない。

「昌浩……」

やっぱり、君は気づかない。
どうしたら気づいてくれる?
俺だけこんなに好きなのは苦しいだけだよ。

「昌浩……」
「……何?比古」

嗚呼、やっと気づいてくれた。
愛しい君は俺を見て、首を傾げて、そしてまた本に視線を向けようとする。
そんなの俺は堪えられない。
いつも君の瞳を見ていたいし、声が聞きたい。
こんな俺はどうしようもないほど、君が好きなんだと感じる。

「昌浩……」

君に後ろから抱きついて、耳元で名前を囁く。
きっと君は頬を赤く染めて、俺を怒るはずだ。
でも、そんなことはなくて、君は笑っていた。

「もう、わかったから……降参」

お手上げだよと本を閉じて、君は立ち上がった。
俺より少し背が低い君は、俺を少し見上げた。

「昌浩、本ばっか見ないで」
「ごめんね?」

君はシュンとしてしまった。
不謹慎だけど、そんな君も可愛いと思ってしまう。

「比古……」
「ん?何?」
「俺、ちゃんと比古のこと好きだから」

好きか、嬉しいな。
君が言葉にしてくれるだけで、無性に嬉しかった。
俺だけがこんなに好きわけじゃなかったんだと安心した。

「俺も好きだよ」



*END



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