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鳥籠



鳥籠



鳥籠の中の鳥はずっと飛びたがっている
ずっと青い空を見上げて、自由を求めている
心は自由に空を飛んでいるのに




飛べないのは身体だけ

- * - * -


「……ぁ、ぅぁっ……はっ……!」

少年の高い喘ぎ声がする。
もう、ずっとずっと前から。

太陰は知っている。
この少年は、ただ自由が欲しかったのだということを。
今の時代に金無くして自由を手に入れることはできない。
だから、少年は自分の身体を商売の道具に選んだことを。


「あぁ……っ!」


時折、苦しそうな声を上げる。
その声が聞きたくなくて、太陰は耳を両手で覆う。

『聞きたくないっ!』

少年の苦しみが伝わってくるから。
何もしてやれない自分が情けないから。
日はもう昇っていた。
あれから幾度となく聞こえた苦しげな声は消え、辺りは静寂に包まれていた。
ガラッと音がして、閉ざされていた障子の隙間から白い単衣姿の少年が出てきた。

「あ、太陰こんなとこにいたの?」

つらい筈なのに少年は笑って見せる。
その姿は太陰には痛々しくて仕方がなかった。

「うん、昌浩を待ってたの」
「ここ寒いのに……」

今は、冬の半ば。
朝は冷え込みが激しい。
いつも自分より人の心配ばかりの少年は、自分の羽織っていた袿を太陰の肩にそっとかけた。


「冷えるよ」


その優しさが、あたたかさがいつも太陰を包み込む。
不意に熱いものが胸の奥から込み上げてきた。
太陰は重く閉ざしていた口を開いた。








「……泣きたいならなけばいいじゃない!逃げたいなら逃げればいい!」

昌浩はその言葉に目を丸くしたが、ふっと天を見上げる。
そうしていないと目から溢れるものをとめることができないのであろう。



「そうだね……」







鳥籠の鳥は、やがて自由を見つける
そして、鳥籠から飛び立つ








鳥籠の中、ずっと夢見た自由な空に――



*END



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