過ち
濃い藍色の狩衣は血と砂で汚れ、切り裂かれていた。
ひとつに纏めていた髪は解け、白い肌には無数の切り傷。
そして、胸から背中を突き抜けている鋭い刃。
刃をつたって流れた血がぽたぽたと落ちて、地にまだらな染みを作っていく。
- * - * -
ぐっと胸に突き刺さった刃が、素早く引き抜かれる。
昌浩はその場に崩れ落ちると喉元に手を当てた。
肺から血が込み上げてきて、気管を詰まらせた昌浩は咳込んだ。
大量の血を吐き出し、みるみるうちに血の気が引いていく。
異様な程に白くなった顔に手を伸ばそうにも届かない。
すぐそこにいるのに、もう少しで手が届くというのに。
ぐったりとした昌浩は、血で汚れた唇を小さく動かした。
“紅蓮のせいじゃないよ、俺が半人前だったから………だから責めないで”
嗚呼、また俺は無力だった。
大切なのに、目の前で死に逝く君をただ見ていることしかできなかった。
まるで水を掴んで、指の間からすり抜けていくように君を失った。
もう二度とそのあたたかな心には触れられない。
優しい君は、もうそこにはいない。
*END
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