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I want to you.



I want to you.



気がつけば、俺はいつもその後ろ姿を追っていた。

 - * - * -


小さな身体に似つかわしくない量の書類を抱えて、コナツは廊下を走っていた。
その後ろを足音をたてずに通り過ぎようとしていた俺。

「少佐、どこに行かれるおつもりですか?」

コナツは振り向きもせずに俺に問いかけた。
一瞬、後頭部に目がついているのではないかと疑うくらいだ。

「えっとね……息抜きに」
「さっき行ってらしたでしょう?」
「じゃなくて……アヤたんに呼ばれて」
「アヤナミ様は上層部に呼ばれていらっしゃいませんよ」

言い訳するも悉く反論され、俺は仕方なく嫌いな事務をすることとなった。
自分のデスクに向かって、書類に目を通しているとコナツは呟いた。

「今日は仕事してくれるんですね」
「ん……たまにはね」
「毎日はしてくれないんですか?」

いつの間にか近くに来ていたコナツが、上目遣いで俺を見ていた。
不覚にも上目遣いで見てくるコナツを可愛いと思ってしまった。
濡れた唇、赤くなった頬。
なぜか、そんなところにばかりに目がいってしまう。

「少佐?」
「毎日さ……仕事して欲しかったら」
「して欲しかったら?」
「コナツをちょーだい」

俺の思わぬ言葉にコナツは唖然としてしまって、動かなくなってしまった。
流石に失敗したかな、と俺は少し後悔した。
いつもの笑顔でコナツを見ているとコナツは頬をますます赤くした。

「俺をですか?」
「そ、コナツを」
「どうしてですか?」
「ん……好きだから」

やっぱりコナツは可愛い。
俺の言葉にいちいち反応してくれるし、何よりコナツは居心地がいい。

「コナツ?」
「……」
「返事しないとちゅーしちゃうよ?」
「嫌です!」

いや、流石に今のは傷つくよ。
でもそんなに真っ赤な顔して言っても、なんの抵抗にもならないんだよ。
俺はコナツの細い腰に手を回して、唇に口付けた。
手離したくない。
俺の腕に身体を委ねて、荒い呼吸を整えようと深呼吸を繰り返す。

「少佐」
「二人の時はヒュウガって呼んで」
「……恥ずかしいですよ」

コナツは顔を合わせずに言った。
俺に刃向かうなんて、可愛い奴だと思ってしまう。
それくらい俺はコナツを愛している。
でも、昔から言うじゃないか。
好きな子ほど意地悪したくなるって。

「じゃあ、仕事しない」
「少佐!嘘吐いたんですか……?」
「嘘は吐いてないよ?」

そう、嘘は吐いてない。
潤んだ瞳で見上げても駄目。
嗚呼、でも可愛いから許しちゃうかもしれない。

「俺を少佐にあげましたよ?」
「コナツが全部欲しい……だから、俺のこと名前で呼んでくれたら仕事するよ?」

その理屈がわかりませんとコナツは怒ってしまった。
俺の腕の中から抜け出し、散らかった書類の整理を始めた。
可愛いコナツが俺の名前で呼んでくれるのが夢なんだ。
その可愛い声で愛らしい唇で俺の名前を呼んで。
不意に背を向けていたコナツが動きを止め、小さく呟いた。
ヒュウガさん、と。

「おいで、コナツ」
「……嫌です」

両手を広げて呼んでも、コナツが来ないことぐらい知っている。
だから、俺から抱き締めに行く。
後ろから抱き締めてやれば、少し抵抗はするもののすぐに大人しくなる。

「コナツは可愛いね」

耳元で囁くと擽ったそうな顔をする。
やっぱり何気ない本人の無自覚な仕草が俺を夢中にさせる。
ちゃんとわかってるかな?

「……休憩にしよっか?」
「また……ですか?」
「今度はコナツも一緒だよ」

休憩は休憩でも俺だけの安らぎ。
コナツの全部が貰えるなら、コナツの全部が俺のものなら。
休憩時間はコナツの膝枕で眠りたいな、と我が儘を言えば、今日は珍しく言うことを聞いてくれた。
いつもなら恥ずかしがってしてくれないのに。

「少佐?」
「名前」
「ヒュ、ヒュウガさん……」
「んーどうしたのコナツ?」

周りを頻りに気にしていたコナツは、じっと俺に目を合わせてきた。
今日は、よく珍しいことばかり起きるものだ。

「……す、す」
「す?」
「……好きです」
「うん……知ってる」

そんなこと知ってるよ。
俺がコナツのことが好きなようにコナツも俺のことが好きなんだよね。
そんなこと言われなくても知ってたよ。
好きな子のことだからね。

「俺もコナツが好きだよ」
「知ってます」

やっと振り向いてくれた君は、俺のことが好きだった。
二人は互いのことが好きで、相思相愛。
職場は誰にも邪魔されない二人だけの世界。



*END



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