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雨〜帰り道の出来事



雨〜帰り道の出来事



「……流石、トラブル吸引体質」
「うるさい」

学校の帰り道、いきなり降り出した雨で咲羽と祐喜はびしょぬれになりながら近くの店の軒下に逃げ込んだ。

「……あー、だから俺が早く帰ろうって行ったのに」
「ご、ごめん……だって借りてた本の返却日過ぎてたの忘れてたんだよ!」
「だからって俺を巻き込むなよ」

咲羽は祐喜を軽く睨んだ後、ふんっとそっぽを向いた。
祐喜は言い返そうとしたが、咲羽の言うことももっともなので上手い言葉が見付からずゆっくり下を向く。
咲羽は、一時間ほど前のこと思い出して後悔した。
図書委員と友達だと言うことを何気無く祐喜に話してしまったのだ。
それを聞いた祐喜が咲羽なら図書委員に上手く言って許してもらえるだろうと考え、無理矢理図書室まで引っ張って行ったのだ。

「それだけならまだ許す……けど」
「けど?」
「何であんなにアイツと話す必要があるんだよ」
「え、えっと……」

図書委員と話して直ぐに帰ろうする咲羽をよそに、祐喜は図書委員にいろんな質問をし始めたのだ。
しかも先に帰るなと言われ、仕方なく咲羽は図書室の椅子に座り携帯を意味もなくいじって時間を潰した。

「えっとその、だって格好いいし……さ」
「ふーん、で、俺を使っていろいろ探ってたわけ?」

盗み聞きしてたわけじゃないけど、話の中に咲羽の名前が出てきた気がしたのだ。

「はぁ?!ち、違うよっ!」
「じゃ、何?」
「それは……別に関係ないだろ!」

それからどちらからともなく目線を外し、また少し沈黙が続いた。
先に気まずい沈黙に耐えかねて空気を破ったのは祐喜だった。

「……まだ、怒ってる?」
「当たり前だろ」
「謝ったじゃん!許してって」
「そんなにアイツに気があるのかよ!惚れたのかっ!?」
「はぁ……だーから、それは関係ないって言っ」

かなりハイスピードの言い争いの途中で、祐喜の言葉がいきなりとまった。
いつの間にか雨はやんで、綺麗な青空になっていた。

「あ、雨が……」
「見ろよ」

祐喜が青空を指差している。
最後まで言葉言わせろよと思ったが祐喜が指差す方を咲羽は目を向けた。

「あー虹」

七色に輝く虹が空に架っていたのだ。

「凄い綺麗……伸びてる!凄っ!」
「あぁ」
「綺麗……」

虹を眺める祐喜は何時もより凄く綺麗に見えた。

「ちゃんと見てるのか?」

咲羽に顔を見られていることに気が付いた祐喜は咲羽を少し睨んだ。

──さっきまで怒ってた癖に。

咲羽は心のなかで小さく呟いた。
だが、祐喜のこんな顔が見れたならまあいいや、なんて思ったのは自分だけの秘密。
咲羽の友達だという図書委員を通して咲羽の事をもっと知ろうとしていた祐喜もまた、そのことは自分だけの秘密。

そんな二人を見ていたのは虹だけだった。



*END



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