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エリカ



エリカ



いつもと同じ朝。
いつもと同じ自分の部屋。
違うのは、隣に君が寝ていること。

「また、ですか……」

右腕をがっちり抱き締められて、起きようにも起きられない状態。
呆れ顔で溜め息を漏らした雨丸は、自分の隣で寝ている王太の肩を揺さぶった。

「班長、起きて下さい」
「あと三分……」

下手な台詞を吐いて、王太がさらに腕に力を入れてきた。
年の割に力が強い。
彼は交通課の班長であり、誰もが憧れるエイジの中の栄児。
しかし、こういう時だけは年相応に見えてしまう。
ホラー系が弱いところとか、苦手なものがあったことに驚いたくらいだった。

「今日も遅刻、かな……?」

雨丸は再び大きく溜め息を吐いた。
昨日も遅刻。
一昨日も遅刻。
そして、今日もたぶん遅刻。
三日連続の遅刻。
しかも、三日とも王太と一緒に遅刻。
原因は、もちろん王太の寝起きの悪さ。
一度寝るとなかなか起きない。
ようやく起きたとしても、なかなか動こうとしない。
そもそも、どうやって雨丸の部屋に入ったのかも謎。
わからないことだらけ。
雨丸は、自分は仕事に行く気があるのかなどと考え込んでしまった。
結局、今日も遅刻。

王太に何度も声を掛けた雨丸だったが、あと三分で何度も流された。
一体、あと何分待てばよいのやら。

「班長、遅刻ですよ」
「……んっ、眠い」

寝る子は育つと言うが、ここまで寝ていると逆に心配である。
王太は眠そうに目を擦りながら起き上がると、枕元にある時計を覗き込んだ。
時計の針はちょうど十時を指していた。

「十時……やっべ!遅刻じゃん!」

慌ててベッドから飛び降り、床に落ちている上着を拾い上げた。
手早くその上着を羽織ると王太は洗面所まで走って行った。
その間に雨丸はいつもの制服に着替えて、欠伸をしながら王太のいる洗面所まで歩いて行った。

「あ、おはよ雨丸」
「おはようございます……」

いつもと同じように朝の挨拶を交わして、お互いの顔を見て笑いあう。
それが、毎日一緒だと思うこと。
愛しい人と過ごす愛しい時間。

「班長、今日も遅刻ですね」
「おうよ……京平に怒られるな」

怒られるのは怖くはない。
だって、怒られるときは二人一緒だから。



*END



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