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You're the one for me.



You're the one for me.



「……拷問だろ」

フラウは呟いた。
その視線の先には、ベッドの上で気持ちよさそうに寝ているテイトがいた。
疲れているのか、フラウが部屋に入って来ても起きなかった。

「ここは俺の部屋だぞ……」
「んっ……」

言葉に反応したのかテイトは、身じろぎした。
フラウはテイトの傍に膝をつくと、テイトの手を握り締めた。
あたたかくて優しい小さな手だ。

「フラ、ウ……」

フラウは起きたのかと思い、とっさに手を離した。
しかし、寝言だったらしく、テイトは瞼を堅く閉じたままだ。
この瞼の下にある純粋な翡翠の瞳に射ぬかれた。
それが、とうの昔のようだ。
神に愛され、神より使われし、天使のごとき悪魔。

「俺の夢を見てるのか……?」

フラウは、テイトの頬をそっと撫でてやった。
あと、どれくらいこの穏やかな時間を過ごすことができるのだろう。
少しずつ、死に急ぐお前を止めることはできない。
向こうで待っている者がいるのだから。

お願いだ。行かないでくれ。
ミカゲ、俺からテイトを奪わないでくれ。


お前がいない世界で、俺はどうやって生きていけばいい?
もう一度、テイトの手を握り締めた。
反対側の拳が痛い。
握り締めすぎて、白くなっているのがわかる。

「んっ……フ、ラウ……?」

気づけば、テイトは目を覚ましていて、寝ぼけた表情で俺を見ている。
翡翠の瞳が光を浴びて明るく色を変えた。

「な、なんで、手……握ってんの!」
「あぁ、お前がどっか行っちまわないように」
「……意味わかんねぇ」

意味なんてわからなくていい。
ただこの手を繋いでいる間だけは、お前をここに縛っておける。
たったそれだけのこと。

「俺はどっか行ったりしない」

お前はいつもそう言う。
だけど、お前は償いたいと思っている。
真っ直ぐに突き進んで、いつかすべてを知った時、お前はどうするんだ?
ミカゲの為に今は生きて、いつか行くんだろう?
ミカゲのところに。

「簡単に手放せるかよ」

決して行かせはしない。
ここに縛って、逃がしたりしない。
ミカゲにお前を渡すわけにはいかない。

「何?……ぅわっ!」

テイトに覆い被さったフラウはテイトの唇を奪った。
熱くて甘い唇に何度も長く口付ける。
背中に回された小さな手があたたかい。

「たくっ……無防備なんだよ」

しばらく堪能した後、唇を離した。
優しく抱き起こして、強く抱き締める。
壊れてしまうくらい強く。
テイトもまた、されるがままになっていた。

「フラウ……好き」
「俺はお前を愛してる」

お前ひとりを愛している。
ミカゲにも譲らない。
神のもとにも帰さない。
お前は俺のいるところに帰ってくればいい。
どんなに強く思っていれば、この気持ちが届くのか。
そんなの誰にもわからない。
ただ確かなのは、言葉にしないと届かないということ。
目の前にいる少年を手離せない俺がいるということ。



*END



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