[携帯モード] [URL送信]
オモイアイ



オモイアイ



「班長の大切なものって何ですか?」

突然、前を歩いていた雨丸は振り返って王太に聞いた。

「はぁっ?」

唐突な質問に呆気をとられた王太だったが、少し考えて雨丸をじっと見つめた。
しばらくして、少し頬を赤く染めながら一言だけ口にした。

「言わねぇ」

王太が俯き加減に言ったので、少し声が籠もっていたのだが雨丸には聞き取ることができた。

「えぇっ!気になるじゃないですかっ」
「言わねぇったら言わねぇっ!」

少し潤んだ瞳で見上げながら怒るものだから、流石の雨丸も一歩後ずさった。
けれど、ここで引き下がりたくない。
変に頑固な雨丸は追求の手を緩めない。

「えぇっ!どうしてですか?」
「恥ずかしいから」

今度の王太は即答だった。
雨丸は顎に右手の人差し指を当て、考える。
あーだの、うーだの声を出して。

「恥ずかしいって……ぬいぐるみとかですか?」

しばらく考えて出した結論は、本当に人のことを馬鹿にしているんじゃないかと思うくらいのものだった。

「違うに決まってるだろ!鈍感っ!」

ますます頬を赤らめる王太に雨丸は冷たく言い放った。

「意味わかりません」
「お前はどうなわけ?」

話を急に自分から相手に変えた。
雨丸はさっきまでの暗く沈んでいた表情は消え、にっこりと微笑んで言った。

「俺は……俺の大切なものは班長です」
「はっ?」

思いもしなかったことを言われて、王太は拍子の抜けた声をあげた。
聞き間違いなのか、それとも別の何かなのか。
戸惑いを隠せない王太に雨丸はもう一度言った。

「だから、班長が一番大切なんです」

その言葉で王太の迷いはなくなった。

「……俺の大切なもの知りたい?」
「教えてくれるんですか?」

雨丸は目を輝かせた。
興味津々といった目だ。
何やら恐怖が半分くらいあったが、興味の方がほんの少し勝っていた。
子供みたいにワクワクしながら、王太の返事を待った。
王太は薄く笑った。

「……お前だよ」
「へぇー俺ですか……って俺っ!?」

少し遅れて反応を示した雨丸は、うわぁ、どうしよ、なんて言いながら王太をまじまじと見つめる。

「本当に本当ですか?」
「本当に本当」

短く王太が言うと、雨丸は頬を赤く染めて、王太に手を差し出す。

「これって、想い合いですね」
「そうだな」

無邪気に笑いかけてくる雨丸の手をぎゅっと握った。
雨丸も握り返してくれた。
俺たち二人、手を繋いでならどこまでも行けそうな気がした。



*END



BACK/TOP







あきゅろす。
無料HPエムペ!