好愛恋
愛してるとか愛してないとか、好きだとか嫌いだとか。
言葉に何の意味があるのかわからない。
だって、それが物じゃなくて感情のひとつだから。
- * - * -
「好きって何だろ……」
机に頬杖ついていた王太は、小さく呟いた。
「愛を追求することじゃないですか?」
散らばった書類を片付けながら雨丸は答えた。
反応があって嬉しかったのか、王太は少し考えて次の質問をした。
「じゃあ、愛は?」
流石の雨丸も戸惑いを見せたが、答えを見つけ出した。
「大切にしたいっていう気持ちだと思います」
雨丸は王太の質問に答えると、書類の山を抱え、ふらつきながら運ぶ。
そんな雨丸に王太が駆け寄った。
「そうなのか?じゃあな――」
言葉が途切れて、王太は雨丸を後ろからぎゅっと抱き締めた。
雨丸の持っていた書類が、ばさっと音をたてて床に散らばった。
「これは、何なんだろ?」
雨丸は少し驚きつつ、自分の服をぎゅっと握る王太の手に優しく自分の手を重ねて言った。
「きっと、恋じゃないでしょうか」
「恋……」
二人の間にしばし沈黙が流れた。
そして、次に口を開いたのは雨丸だった。
「こういうこと」
雨丸は王太の方に向きを変え、王太を包むように自分の腕の中に抱いた。
王太は静かに雨丸の腕の中で笑った。
「好きです、班長」
好きと告げられて、王太は戸惑いを隠せずに俯いた。
その様子に雨丸は困惑し、腕の中から王太を解放した。
「雨丸……」
「はい?班長、どうしました?」
俯いたまま王太が自分の名前を口にしたことが嬉しかった。
雨丸は王太の前に両膝をついた。
「班長……?」
小刻みに震える王太の肩に触れようとしたときだった。
「んっ!」
ふっと王太の顔が近づき、唇を強引に奪われた。
一気に舌を入れられ、口腔内を犯される。
歯の列を裏から舐められ、舌をからめられる。
どちらのものかわからない唾液が、口の端からつぅっと流れた。
長い、長いキスの末に唇を離すと雨丸はペタンと床に座り込んだ。
「……は、班長……」
王太は、薄く笑った。
この顔が雨丸は好きなのだ。
そして、王太は言った。
「雨丸のことが好き」
雨丸は真っ赤に頬を染めて、笑った。
「知ってます」
王太は、真っ赤になった雨丸の頬にそっと触れた。
その手に雨丸は手を重ねた。
*END
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