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君を想う



君を想う



「もし、もし、俺がいなくなったら班長はどうするんですか?」

って聴いたら、もし何てねぇよ、俺が守ってやるからと言ってくれた。
でも、そんな俺の甘さと弱さとがいつか班長を殺してしまう。
以前、寿に言われた言葉は片時も忘れたことはない。
そして、いつか俺たちの九歳という年の差が引き離すことがあったとしても。
繋いだ手を離さなければいい。
そう思っていた。

 - * - * -


「雨丸」

聞き覚えのある声。
深い深い眠りを妨げるように、その声は響く。
重い瞼を上げれば、辺り一面、血の海。
その中心に俺と彼がいた。

「班長……?」

だけど、彼からの返事はない。
動くこともない。
留めどなく溢れてくる血の音だけが、床に滴り落ちて部屋中に響きわたる。

「班長……?」

いつも一緒にいたからこそ。
いつも隣にいたからこそ。
彼がいなければ、歯止めがきかなくなる。

「班長……?」

どうしてあの時、逆になった場合のことを考えなかったんだろう。
俺が、自分がいなくなることばかり考えて、班長がいなくなるなんて思いもしなかった。
班長がいなくなったら俺は、どうするんだろう?
このまま何もせずに目を閉じ、耳を塞いでいられたらどんなに楽だろう。
現実を受け入れずにいられたら、どんなに楽だろう。
彼のいない生活なんて、考えられない。
いつだって俺の中心には、彼がいたんだ。
でも、もう彼は戻ってはこない。

魂がずっと、ずっと遠くに行ってしまったから。

俺は、そっと彼の唇に口付けた。
その唇に俺だけが触れていいように。
その瞳に俺だけが映っていいように。

全てが俺のもの。

俺のものにならないなら死んでしまえばいい。
それでも、駄目なら俺が死んでしまえばいい。

きっと、きっと、永遠に俺のものにできる。

誰よりも何よりも君を想うからこそ。
俺はそう思っていた。



*END



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