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『世界はそっち側』
9


―――翌日。
ちょっと早い時間に目が覚めてしまったオレは、少し早いが仕事しようと起き出し、身嗜みを整えて食堂へと向かった。
少し早いといっても食堂には何時もよりかは少ないが、数人の生徒の姿もあり、そして数人の教師達の姿が見受けられた。
ここの学生寮の傍には教師専用の寮も存在し、そちらの寮には食堂は備えられていなく、学生寮の食堂にまで足を運ばなくてはならないらしい。
まぁ、圧倒的な人数の差を考えれば教師専用の寮に食堂はなくても良いっていうのはわかるけどな。
二階席に行こうか、それとも人も少ないし、このまま目の前のテーブルで食べるか……。
二階席まで上がるのが面倒だと悩んでいれば、ふと視線を感じ、ちらりと横目で確認すれば、朝食を摂っている数人の生徒達と教師達がオレの様子を窺っているようだった。
中には明らかに睨みを効かせている人もいて、オレも面倒事は避けたい身ではあるので、面倒くさいけど二階席へと向かった。
当然だけど二階席には誰もいなくて、でも気楽に朝食が摂れるとてきとうな席に着いてパネルを操作する。
昨日の夜は食いっぱぐれたから腹は減っているけれど、少し早い目覚めのせいか、がっつりいく気にはなれず、胃に優しめなメニューを選ぶ。
少しして目の前が光って注文した料理が届いた。因みに温かいうどんを頼んだ。
手を合わせて「頂きます」と小声で言ってうどんを啜る。
出汁の具合が丁度良くて空っぽの胃に沁みる美味さだ。
うどんを啜りながら今日一日の予定を考える。
なかなかに減っていかない書類との睨めっこが終わらないから今日も授業には出れそうになく、相変わらず生徒会室に籠りっぱなしだろうと、ここ最近の日常となんら変わらない一日を過ごすのだろうと思うと、
溜め息が出てしまう。


「レクリエーションが終われば少しは楽になるだろうから、それまでの辛抱だな……」


そう、ここ最近の忙しさは、他の役員が仕事放棄しているからという理由の他に、今度行われる生徒全員参加型のレクリエーション、『サバイバルゲーム』の手続きやら準備やらを実行委員会と風紀委員会と一緒に行う事になっている為、つまりオレは通常の仕事に加えてそれらを一人でやっている訳だ。
忙しなく動き回っているとはいえ、何せ生徒会からはオレ一人しか参加しないから若干の遅れはありつつも、着々と整ってきてはいる。
しかし、準備に参加している実行委員会に関しては、オレが話をしに行っても非協力的な姿勢のままだし、風紀委員会に関しては、委員会としてのやるべき事はやるが、それ以外は勝手にしてくれって態度だ。腹立つな。


「……あ、そうだ。今日はサバイバルゲームをする場所の下見して許可証を受け取らないといけないんだった」


つまり少しの間、生徒会室を離れる訳だが、鍵を閉めれば一般生徒の立ち入りは出来ないが、問題は他の生徒会役員達だな。
別に、あいつ等の居場所でもある訳だから入室してたって問題はないんだけれど、問題は高城だ。
あいつは我が物顔で生徒会室に出入りして散らかしまくり、生徒会長席にも無断で勝手に座る上に食べ物のカスをこぼすわ、書類を勝手に触るわ、勝手にサイン書くわで、出来れば留守にはしたくないんだよなぁ……。
だからといって他の誰かに下見に行ってくれなんて頼んだ所で聞き入れてくれる奴なんていないだろうし。


「はぁ〜……、仕事が増える……」


あんまり吐きたくないんだけれど、自然と溜め息が零れてしまう。


2018/6/8.



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あきゅろす。
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