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『世界はそっち側』
5


ちらりとお互いに目配せをする後輩達に、素直に答えてくれるような輩ではないかと、諦め半分の気持ちで返答を待つ。
暫くして一人が小馬鹿にするように一つ、鼻で笑った。


「ハンッ……悪魔崇拝者の家系の人間に何をしていようが、『忌子』の先輩には関係ないじゃないですか」

「……"悪魔崇拝者の家系"?」

「知らないんですか?この学園にも数人、いるんですよ。まぁ、貴方よりかは目立ってないんで、知らなくても仕方ないって感じですけど」


くすくすと卑下た笑みで笑う後輩達に、"知らなくても仕方ない"というよりかは"知らないだなんて信じられない"と馬鹿にされている感が否めない。
いや、実際に知らないから素で聞き返したんだけど、そんな事こそこいつ等は知らない訳だから、当然な反応なのかもしれないが。
悪魔崇拝者というのがどんな輩なのかは不明だが、もし文字通りのものだとしたら、生徒会長でなくとも把握しててもおかしくはない、というのが常識的らしい。
あとで青海に聞いておくか。


「とりあえずサボってる事には変わりはない。学年、クラスと名前を教えて貰おうか」

「……ッ、誰が言うかよ!!」

「あっ、おい!!」


元の世界では生徒の確認を取るのに生徒手帳を提出させていたけど、こっちの世界では生徒手帳という物は存在しない。
生徒手帳に当たる物に鍵が挙げられるが、それが正しいものなのか、今のオレには情報不足な為、迂闊な事が出来ないと判断して口頭で伝えて貰おうとしたのだが、後輩の内一人が先の台詞を吐いたのと同時に、いじめていた側の生徒達が一斉に駆け出して行ってしまった。
引き止めたかったけど、いじめにあっていた悪魔崇拝者の家系と言われた生徒も放っておけなくて、追いかけたくても出来ず。


「……ったく。おい、お前は大丈夫だったか?」

「あ……、は、はい」


生徒に声をかければ、びくりと怯えつつも、こくりと頷くいじめにあっていた後輩。
跳ね付けられるとは思うが、後輩を立たせる為に一応、手を差し伸べて様子を見ると、後輩はオレの顔と手を交互に見て、恐る恐るといった風にオレの手を掴んだ。
珍しいものだ。そう思いながらもぐいっと引っ張ってやれば後輩は少しふら付きながらも立ち上がった。


「一応、氷柱?は阻止出来たけど、何処か怪我してないか?」

「はい、大丈夫です……。よく、ある事なんで……」

(……いや、それは大丈夫って言えるのか?……ん?)


おどおどと話す後輩に、他の悪魔崇拝者の家系だという生徒達も被害にあってるのだろうかと疑問を抱いた時、後輩の方で何かがひらりと落ちた。
それは正方形の白い紙切れのようで、両面とも真っ白のままなのか、または今見えている面が裏面で伏せてある方に何か書かれているのかわからないけれど、もし何か書いてあって必要な物だった場合、落としたままじゃ大変だと思って、それを拾った。
そんなオレの行動を目で追っていたのであろう後輩の方から「……あっ」という少し焦りの混じった声が聞こえた。


「……え?」

「あ、あの、それ……ッ」


拾い上げた紙切れを裏返して見て息をのんだ。
そこには紙切れいっぱいの絵が描かれていて、絵というには華やかなものではなく、丸い円の中に星と、身体は人のようだけど頭部が動物といったよくわからない絵が黒いインクで描かれていた。
その禍々しい絵にぞくりと背筋が震えた。


「す、すみません!!返してください!!」

「え……?あ、あぁ……悪い」


さっきよりも慌てた様子で言う後輩に驚いて、咄嗟に紙切れを返す。
受け取った後輩はぺこっとお辞儀をしてそのまま何も言わずに走り去ってしまった。


「……今のって……」


後輩が落としたあの紙切れがなんなのか、どういった意味があるのか、その他諸々と詳しく聞く事も出来なかったが、背筋を駆け巡った何かが今もまだ残っている。
よくわからないけど、アレは良い物ではない事だけは確かだと直感的に思った。
だけど、それとは別に何処となく覚えのあるような感覚を疑問に思い、オレは首を傾げた。


2017/11/7.



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