[携帯モード] [URL送信]

『世界はそっち側』
3


「そもそもここは一般生徒の立ち入りは禁止なんだぞ?わかってんのか?騒ぎたいのなら別の所に行け」

「なーに言ってるんすかー?ケンタと一緒にいたいのに場所なんて何処だって良いじゃないっすかー」

「お前らが転校生と何処にいようが構わねぇが、けじめはつけろって言ってんだ。他の一般生徒達に示しがつかねーだろ」

「……会長、うるさい……」

「それには上坂に同意します。構わないと仰るのなら放っておいて頂けませんか?」


ブーブー、と文句を垂れる三人は散らかったテーブルの上のゴミをザザーッと隅っこに追いやり、空いた場所に新たな菓子やらデザートやらを広げ始めた。
どうやら一度退室したのは、追加の菓子類を買いに行く為だったようで、こいつ等は元々ここに戻って来る気満々だったという事か。
わいわいと楽しそうに話をしながらガサガサと菓子を漁る。
そもそも今この時間はまだ授業中だろうが。菓子買ってねぇで授業出ろや。こちとら出たくても出れねぇのにサボってんじゃねぇよ。
うんざりするしかなくて溜め息を零すが、誰も気にしない……というか聞こえていないんだろうな。
もう無視してオレも仕事に取り掛かろうと書類に視線を這わすが、なんとなく視線を感じた為に顔を上げれば、見慣れぬ生徒と目が合った。
合った瞬間パッと逸らされてしまったが、明らかにオレを見ていたよな?
まぁ、オレを見る目なんて大体が『忌子』と呼ばれるゆえんのこの容姿なのだろうから、慣れてしまった為、さして気にしない。
しかし、あの生徒は同級生では見ない顔だから後輩なのだろうが、生徒会室という場所が似合わない雰囲気だな。
見た目からしてどちらかと言えば風紀委員室にいる方がしっくりくる様な不良な容姿をている。
だから違和感が半端ないのだが、転校生の傍にいるって事は、こいつも転校生に惚れてるって事だよな?
不良までも魅了する転校生……いや、全く魅力を感じないからこそ、本当にどこが良くて好きになんてなったのか。
兎に角、なるべくこの騒音を拾わないよう書類作業に集中する事にした。










沢山の書類たちを捌き、何枚目になるかわからいが、とある書類を目にして少し手を止めた。
その書類には『生徒全員参加型レクリエーション』と書かれてあり、更には催し物として『サバイバルゲーム』と書かれてあった。
普段見慣れぬ単語に内容を見てみれば、それは全校生徒が学園裏にある学園所有の裏山にて魔法を使用したサバイバルゲームを行うものらしい。
詳細については書かれていないからルールとか全く情報が入らないけれど、学園側から発行された書類ならば、例年行われている学園行事の可能性がある。
なら過去の資料を見ればどんなゲームなのかはわからるだろうから、ルールの心配はなさそうだな。
今手元にある書類は『学園側から今年も開催するからどうぞ宜しく』といった確認及び許可の為のものだ。
行事進行やら学園の事やらなんやらを基本的に生徒会や風紀委員に任せているとはいえ、学園側からの申し出であれば特にこれといった明確な理由がない限りは受理される。
日程と当日までに必要なもののリスト等の名前が書かれてあって、それを付箋に写し書き、確認及び許可のサインと判を押す。
風紀委員長のサインも必要らしく、でも既に結城の名前と判は押されている状態だった。
相変わらず凄くきれいとは言い難いが、それでも男が書いたにしちゃあ丁寧に書かれたあいつの字を指でなぞる。
前までは当たり前の様に何時でも見てた字なだけに、なんとなく懐かしさを感じてしまう。
さてこの書類の提出期限日は何時だろうか。
確認すれば、それは今日までだったらしく、ちゃんと締め切りの日付を確認して書類を分けていたつもりだったのだが、抜けていた様で溜め息が零れてしまう。
今から出しに行けばまだ間に合うだろうから、他に提出すべき書類も合わせて持って行こう。
ガタリと立ち上がって退出の準備を始めると「あれっ?」と陽気な声音が響いた。


「柊哉、何処行くんだ?」

「何処だっていいだろう。お前には関係のない所だ」

「酷いぞ柊哉!!オレが親切に付いて行ってやるって言っているのに、そんな言い方しなくてもいいじゃんか!!」


「付いて行くなんて一言も言ってねぇだろうが」という気持ちを込めた視線を向ければ「そんなに見つめんなよッ!!」と頬を染めて慌て出す勘違い野郎の転校生。
そんなオレ達のやり取りを面白くないという気持ちを込めた視線で睨んでくる生徒会役員と見慣れぬ生徒。
鬱陶しいそれらを無視してごっちゃごちゃな生徒会室をオレは無言で退室した。


2017/9/16.



[*前へ][次へ#]

3/28ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!