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『ミッドナイト・オーバーキラー』
2


ざわめく人混みの中をオレは静かに立ち去る。


「また殺人事件ですって……」

「今回は若い女だって話だ」

「怖いわぁ……。明日は我が身かも」


いやだいやだと、うんざりする街の住人を横目に「そうだね」と心の中で返事をする。
そのままオレはお店に入って買い物を始めた。


「えっと……ニンジンとタマネギと……」

「あとこれも」

「……」


うしろからひょいっと籠に入れられた物を見て、更にその手を辿ってその人物を見れば、その人はにこりと可愛らしく微笑む。


「自分で買いなよ、ニナ」

「あら、良いじゃない別に。ただの飴よ?ケチな事言わないでちょうだい」


ニナと呼ばれた人物は、とても可愛らしいフリルの沢山ついた白と黒のワンピース姿で、緩く巻かれたツインテールが、笑った拍子にふわふわと揺れる。
こつりこつりと踵を鳴らしながらオレを抜かして先へ進む。


「ただの飴なら尚更自分で買ってくれる?これは買わない」

「あーん、酷い!!飴一つのためにレジに並びたくないのよ!!」

「知りませーん」

「もぉ〜!!ノラ〜!!」


ノラとはオレの名前で、オレは飴をその辺の棚に戻してすたすたと歩く。
その飴を再び手にして追いかけてくるニナに、周りの客は目を奪われていた。
その様子を横目に見れば、皆頬をほんのり赤らめさせていた。
購入する物を籠に入れてレジに並び会計を済ますと、ニナはちゃっかり一緒に会計を済ました飴を早速開封してその場で舐め始める。
袋に詰め終わり「帰ろう」と言えばニナはオレのあとに続いた。


「そういえば、あんた殺人現場にいたわよね?」

「いたね。通り道だもん」

「今回はどんな感じだったの?」

「何時も通りだなー、くらい」

「まぁ、そんなもんよねー」


ニナは飴を舐めながら器用に喋る。
帰り道も殺人現場の横を通るので、改めてちらりと見るが、さっきとなんら変わっていない。
人も減ってないし、警察の人達もまだそこにいた。
もうそこには何も残っていないというのに、必死に手掛かりを探している。


「ご苦労な事よね。なーんにも見付かんなくても探さなきゃならないんだもの」

「警察も殆んど探す"フリ"をしていると思うよ」

「そりゃあ、そうでしょうね。犯人の手掛かりなんて、ないに等しいんだもの」


くすくすと隣で楽しそうに笑うニナ。
そんなニナと警察と人混みと現場を順に見て「世の中狂ってるな」と思った。


2016/10/27.



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あきゅろす。
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