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『ミッドナイト・オーバーキラー』
1


霧の濃い真っ暗な暗闇に静寂な街並み。
寝静まった街の少し奥まった路地裏には、野良猫が優雅に夜の散歩をしている。
そんな静かな空間には似つかわしくない足音がだんだんと近付いて来る。


「……っは!!はぁ……ッ、た……助けて……!!」


誰に届く事のない女性の叫びは空を切り、女性は走るのをやめない。
どこへ走っても走っても逃げられないという恐怖に足が震え、涙が頬を濡らした時、女性の影が伸びる壁に、その後ろから来るもう一つの影が女性を追いつめる。
振り返れば真っ黒な人影が一つ。
足が縺れて女性はその場に倒れ込んだ。
息が乱れ荒い呼吸を繰り返す中、女性に被る影にびくりと肩を揺らし、視線だけでそちらを見れば黒い影はにやりと笑い、その手に握りしめる光るそれを大きく振りかぶった。
















―――翌日の朝、王都スザヴェル・首都ダリアの街の一角。
朝方まで静かだった路地裏には人だかりが出来ていて、その場所を囲っていた。


「……またですか」

「これでもう何件目ですかね……」


顔色を悪くして呟くのは、その場に駆け付けた軍事警察で、全員が溜め息を吐く。
周りにいる街の住人達もざわざわとざわめき、顔を青ざめさせていた。


「毎回これじゃ犯人の手掛かりが手に入らない。根詰まり状態だ……」

「死体も一体どこに捨てているんですかね。あちこち探しても一向に見つからないし」

「唯一わかっているのは今回の被害者が女って事だけだな」

「この間は子供でしたよね……」


警察の人達は再び現場に目を向けた。
そこには地面や壁に飛び散る血痕の跡が広範囲にべったりと広がり、血溜りには無残に置かれた女物の鞄だけが残っていた。


2016/10/23.



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あきゅろす。
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