[携帯モード] [URL送信]

『ミッドナイト・オーバーキラー』
10


優先して欲しいと言われた連続殺人事件の聞き込みに来ていたというのに、まさか先にもう一つの依頼内容である脱獄囚と偶然にも遭遇してしまうとは。
予測出来ただろうか?否、そんなの無理な話だ。だって偶然だし。
偶然の出来事にしては濃かった。変質者に襲われかけてた所を助けられたかと思ったら、次は脱獄囚に襲われかけるなんて、そんなフラグ立てた覚えはない。
つーか、この人が本当に脱獄囚の人ならオレ写真見てるから顔知ってるじゃん。
ネオやガレットさんに負けない位の整った顔付きの結構な男前だった筈。
目立つ顔立ちを隠す目的でガスマスクを着けているという理由だとしたら意味はないし、本人の言う"己の欲を抑える為に必要な物"というのは本当の事なのだろう。
じゃあ、それが真実だったとしてその"欲"とは何か―――年下男子とキスをかます事しか思い付かない。
え、やだなぁ……そんな"欲"に目を付けられるとか。


「あ、ちょっと待っててね。これも取るから」

「いや、取らなくて良いです。マスクよりも手を放してくれると助かりますてか放して」

「放したら逃げるでしょ?」


なんて当然の事をきょとん顔(多分)で聞いてくる男に呆れて溜め息が零れる。
このままガスマスクも外されてしまうと本当にキスされそうだから―――ってかするな、この状況だったら。
いい加減蹴りの一発でも入れて逃げるか。
そう気を改めて足に力を籠めようとした時。


「少しだけ大人しくしててね」

「んぐっ……?!」


オレが足を上げるよりも一瞬早く、男の指が口の中に侵入してきた。
驚いて息をつめていれば、気にした様子もなく男は指を舌に擦り付けてくる。
味わい慣れた鉄くささに、口の中で出血が起きていると気付いた。
何時、なんで、どうして。疑問が浮かんだけれど、オレ自身怪我をした訳ではないし、痛みもないから血の出どころは男の指からだと予測する。
じわりじわりと滲み出てくる血の味に、自然喉が渇き、舌が血を求めて指を撫でる。
こくりと喉を鳴らして飲み込み、その味をつい癖で堪能していれば、男の指がぬるりと口内から出ていってしまった。
あぁ、もう少し欲しかった。そう思い息を一つ吐けば、随分と熱の籠ったそれだった事に少し恥ずかしさが芽生える。
こんな状況でも好物を前にすれば一瞬でも気が逸れてしまう自分が恥ずかしい。
そう思った事を気付かれない様に視線を下げた時、どくりと心臓が変に揺れた。
なんだと思う間もなく身体の中で何かが蠢いているかの様な感覚に、腹の中が熱く湯だっている様な感覚に違和感を覚える。
次第にじわりじわりと体温が上昇し、身体が痺れて少し息が乱れ始めていく。


(……なんだこれ?……おかしい……)


「はぁ……」と深く息を吐いて熱を取り去ろうと試みるも、無駄に終わった。
むしろ頭がくらくらしてきて、視界もぼんやりしてきた始末だ。
いきなりの体調の変化に頭が追い付けず、首を傾げていれば「効いてきた?」と男が尋ねてきた。


「オレの血はね、少し特別に出来ていてね。どう?自分の意思ではなく強制的に身体を熱くさせられるのは」

「はっ……、な、に……?」

「今の君はね、オレの血によって君の意思に関係なく強制的に興奮させられているんだよ。例えば……ここ」

「……ひっ、?!」


つつ、となぞられたのは下半身の中心。
しかもなぞられて気付いたが、オレのソコは熱を帯びて膨らんでいた。
なんで、どうして、何時の間に……。
その疑問点の答えは、彼の言う"己の意思に関係なく強制的に興奮させられている"という、それを可能にしているという男の"特別に出来ている血"が原因―――これらの証言と症状、状況からして導き出される答えは一つ。 


(この人、普通の脱獄囚じゃない……っ!!)


思い当たるふしに奥歯を強く噛んだ。


2017/4/20.



[*前へ][次へ#]

10/25ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!