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『ミッドナイト・オーバーキラー』
7


「あらやだ。随分と可愛い子がこんな時間に散歩してるのねぇ」


オレの顔を確認した男の口元が、にまりと弧を描きながら歪んだ様に、背筋がぞくりと粟立った。
近付けられた顔の近さに、耳にかかる熱の籠った息に吐き気がする。


「っ、は、なせよ!!」

「口が悪いのも可愛いけれど、そっちが先に声をかけてきたって言うのに、つれないわねぇ」


ぎゅっと更に腕に力を籠められて、痛みに眉を顰める。
確かに声をかけたが、連続殺人犯について話を聞きたかっただけであって、別にあんた個人に用はないのだからつれないと言われても困る。
どうにか拘束されている腕を解けないか、苦し紛れにもがいてみせるが、びくともしない。
どんだけだよ、この馬鹿力……っ!!
情けないが、オレだけじゃどうにも出来ないと判断し、ネオかニナに助けて貰おうとニナに渡されたぬいぐるみをポケットの中からどうにかして外へ出す方法を考えていれば、不意にうしろで纏めて腕を掴んでいた力が少しだけ弱まった事に気付いた瞬間、男の手がするりと太ももを撫でた。


「っ、?!」


びくっと肩を揺らし息をつめれば、それに気を良くしたのか、男は熱っぽい吐息を零す。
すりすりと太ももを撫で回され、滑る様に上へと上がり、ズボン越しに股間をぐっと掴まれた。


「ちょっ、やめ……!!」

「ふふっ。震えちゃって……、あなた可愛いわね」


ぐりぐりと強弱付けて撫で回す手に、ぎっと歯を食いしばる。
こんな所でこんな奴に触られて、気持ち悪いし怖いし屈辱だし腹が立つし悔しい。
それでも人間―――男として生まれた以上、そこを刺激してしまうと、抵抗したくても与えられる快楽をどうしても拾ってしまう。
いろいろな感情とこの状況とが混ざり合って、自然と涙が滲む。
耐えろ耐えろと必死に自分に言い聞かせて、声も上げない様に唇をきつく噛む。


「……っ、ふ、ぅっ」

「我慢しなくて良いのよ?その可愛い声をもっと聞かせてちょうだい?」


耳元で囁かれる声に耐えられずきつく目を瞑る。
どうしよう……、どうしよう、誰か、誰か……。
精神的に限界が近付いて心の中でそう助けを乞う。
誰にも届かないと涙が零れそうになった、それよりも一瞬早く―――、背後でばきっと鈍い音が耳に届いた。
音がしたと思ったら拘束されていた腕が解放され、何が起きたのかわからず、一先ずその場にしゃがみ込む。
解放された事により、安心感から「ハァ……」とつめてた息を外へ出す。
早鐘を打つ鼓動と刺激された事によって若干の熱が籠った下半身を落ち着かせる為に、深呼吸を繰り返し双方なんとか鎮める事に成功した。
そうして落ち着いてから、そういえばとふと気付く。


(一体誰が……。ニナ?それともネオ?)


オレを襲っていた男から恐らく助けてくれた第三者が誰なのか気になり、うしろを振り向こうとしたが、違和感に一瞬早く気付いた。
その違和感というのは、うしろにいるであろう第三者が一言も喋らない事と、さっきから「フー……、フー……」とくぐもった空気が抜ける様な音しかしないという事。
背後の光景を知る為に、恐る恐る振り向いたその先にいたのは―――……。


「う、わぁぁぁああああ?!!!」


月明かりが逆光となり、真っ黒なシルエットで佇む人物がそこにいた―――ただし頭は袋に包まれている。
悲鳴もあがるってもんだ。


2017/2/19.



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あきゅろす。
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