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『ミッドナイト・オーバーキラー』
6


夜のミサが始まる三十分程前にニナが帰って来た。
一人ではなく、見知らぬ女の子を連れて。
歳はオレやニナとそれ程変わらないと思う彼女は、虚ろな瞳でニナを見つめている。
彼女を奥―――正確にはニナの部屋に連れて行き、ミサの為にニナは戻って来た。


「あの人は何処で見付けたの?」

「ちょっと離れた所に大きな図書館あるでしょ?」

「この間行った所?」

「そう!!そこでね、運命的な出会いをしたのよ〜!!気になった本が高い位置にあってね?近くで踏み台に乗ってたあの子が「良かったら取りましょうか?」って!!その気遣いの優しさに愛を感じたわ!!」


「キャー!!」なんて可愛らしく掌で頬を覆いながらその時の出来事を思い出しているニナを、何故それで愛に繋がるのかいまいちわかならないオレは「……良かったね」としか言えなかった。
そのあとはミサを行い、夕飯を済ませて今日一日の幕を閉じた。







―――閉じたのは街の住人達の話だけどね。

街の大半の住人達も寝静まった深夜遅くにオレ達三人は教会から離れた路地裏に来ている。
理由は勿論、ガレットさんからの依頼をこなす為だ。
路地裏を少し歩けば、深夜だというのに数人の人とすれ違ったり、壁に凭れて眠りに就いている人もいて、会う人全員に声をかけて優先する様に言われた連続殺人事件の目撃情報の収集を行った。
三人では固まらず、一人で路地裏探索に出るのは少し緊張したが、酔っ払いとかに絡まれない限りは大丈夫だろうとそう思ってもう少し奥まで進んで行く。
ネオは路地裏にひっそりと佇む小さな酒場にも向かうと言っていた。
ニナには"護衛"がいるから、何かあってもまず大丈夫だろうから、一通り話を聞いたらニナと合流しよう。
別れ際にニナに渡されたぬいぐるみ―――実は特殊な通信機能が備わっていて、これでニナともネオとも連絡はとれるようになっている。
そんな事を考えながら歩いていれば、目の前に汚れた布の塊がもぞりと揺れた。
また誰か寝てる。起こすのも忍びないが、情報収集をする為に塊へと近付いた。


「お休み中、すみません。ちょっと聞きたい事がありまして……」


少し控え目な声量で尋ねたが、塊はもぞもぞと動くだけ。
まぁ、睡眠を妨げられてまで話す気になれない気持ち、わからなくもないから諦めて次行くかと、塊に一言謝罪を述べて立ち去ろうとした、その時―――……。


「随分とつれないんじゃあ、な〜い〜?」


背後から声が発せられ、振り返ろうとした瞬間、思い切り壁に叩き付けられた。
結構な力で叩き付けられたうえに両手を背中で一纏めにされてしまう。
背後から感じる人の体温と荒い息遣いが身に響く。
背中で固定させられている腕に力が込められて、身体がぎしりと軋んだ。


「ッ……いってぇ……」

「あらあら、可愛らしい声してるのね。ちょっとこっち向いてよ」

「ちょ……ッ」


うしろから顎をとられ、無理矢理に横へと向けさせられ、横目に視線が合う。
口調は艶やかさがあるが如何せん声色が低く、明らかに女性ではないだろうと思っていたのが当たった。
オレの両手を拘束して身体を壁に押し付けた人物は、四十代位の薄汚れた服を身に纏った男。
服もそうだが、髭も剃られていない髪も乱れている姿から、この辺りを住み処にしているのだろう。


2016/12/31.



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