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『ミッドナイト・オーバーキラー』
3


いくらミサに来ていた人がいなくなったからとはいえ、ネオに用事があるのなら奥で話せば良いのにとそう思って見守っていれば、そんなオレに気付いたネオが手招きをしてきた。
とりあえず呼ばれたからネオ達の元へ行けば、ネオ以外の二人もオレに視線を向ける。
……オレも何度か話をしているとはいえ、軍事警察の制服着てる人に見られると落ち着かないなぁ。
おずおずと近寄って行けば、いきなり背中をばしんと強く叩かれた。


「いった!!」

「そんな遠慮しねぇで、どうどうとしてて良いんだぜぇ?坊ちゃんよぉ」

「……ハングさん……」


背中を擦りながら振り返るとそこには、教会の入り口に門番の様にいた男の人―――ハングさんが豪快に笑いながら何時の間にか付いて来ていた。
そのまま「わりぃ、わりぃ!!」と悪ぶれる様子のない声音で謝りながら、オレの背中を押しつつ三人の元へ足を運ぶ。


「ハング先輩!!あなた無駄に力強いんですから気を付けてください!!……ノラ君、大丈夫ですか?」

「あ、はい……なんとか」


ハングさんと一緒に三人の元に辿り着けば、その中の女の人―――サリアさんがハングさんを怒り、オレには心配の様子で背中を擦ってくれた。
大丈夫だと頷けば、サリアさんが悪い訳じゃないのに「ごめんなさいね」と謝罪してきたから首を左右に振った。
そんなオレ達をくすくす笑いながら見るネオと、呆れた様子で見てくるもう一人の男の人―――ガレットさんが視界に入る。


「ハング、ノラはお前と十は離れているんだ。手加減しないか」

「つったって坊ちゃんも一端の男ならこれくれぇ問題ねぇだろぉ?なぁ、坊ちゃん?」

「はははー……ソウデスネ」


今度は肩をばんばん叩きながら言ってくるハングさんにオレは諦めて渇いた笑みのまま、心を籠めていない声音で返事をした。
……悪い人ではないのは確かだけど、この人のスキンシップはちょっと苦手なんだよなぁ……無駄に痛くて。
そんなハングさんから一方的に送られるスキンシップに耐えていれば、それを見兼ねたガレットさんがハングさんの手を止めさせ、オレを隠す様に背中に回す。
びっくりしてされるがままにガレットさんの背中を見て「広くて大きい背中だなぁ」なんて呑気に思った。
確かネオとガレットさんって同い年位だった気がする。
それでも二人の背中は生まれつきなのか、役職のせいなのか、似ている様で全く違う。
オレはこの教会で過ごす様になって暫く経ってからガレットさんと初めて会ったんだけど、なんとなくネオの背中よりもガレットさんの背中の方が落ち着く、というか……懐かしいような……。


(……懐かしい、って……なんでだ?)

「いい加減にしないか、全く。ノラ、大丈夫か?……ノラ?」

「っ、え?あ、はい。ありがとうございます」


考え事に没頭していたら、声をかけられていた事に一瞬気付かず、心配そうに顔を覗き込んだガレットさんの顔の近さで引き戻された。
慌てて返事を返せば首を傾げられたが、そのまま頭を優しく撫でられた。


(……ガレットさんって、良くオレの頭撫でてくるんだよなぁ……)


嫌じゃないんだけど、子供扱いされてるみたいでちょっと恥ずかしいんだよな……実際今ここにいる面子でいったら十分子供なんだけど。
ちょっと複雑な気持ちのまま視線を外していれば、ガレットさんが改めてネオに向き直る。


「今日ここへ来たのはこれについてだ」


そう言ってガレットさんがネオに、ある書類を見せた。
その書類を手に取ってじっくり見たあと、ネオはオレの方にその書類を傾けた。
オレが見て良いのだろうかと思ってネオを見れば、こくりと一つ頷かれ、オレは書類へと目を向けた。


「ちょっ、ネオさん……」

「いや、構わない」

「ですが上官……」


そんなやり取りが聞こえたが、気にせずオレは書類に綴られている文章を目で追う。
写真も添えられているその書類は、どうやら殺人事件の捜査内容で、ここ最近起きている連続殺人事件にまつわる事件内容と不可解な姿の遺体写真。
この連続殺人事件の被害者は、いずれも女性ばかりで、殺害方法は絞殺。
だけどそれだけではなく、被害者は皆髪がない―――それも頭皮ごと剥がされた様な状態で遺棄されていると書かれてあった。
この事件は、街の住人を脅かすには十分な連続殺人事件として、連日ニュースで報じられているものだ。


2016/12/23.



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あきゅろす。
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