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『ミッドナイト・オーバーキラー』
2


掃き掃除をしていると、掃除の終わったニナが出てきて気分上々で出かけて行った。


「……好みの人でも見付けたのかな?」


あんなにご機嫌に出かけるという事は、きっと一目惚れしたに違いない。そう予測する。
昨日ネオに一人駄目にされちゃったもんね。
教会の中ではいまだに女の人の声が小さく聞こえて「早く帰んないかなー」と心の中で願った。


「こんにちは」

「……あ」


溜め息を吐きながら掃き掃除をしていれば大通り方面から誰かに声をかけられ、振り向けばそこには見慣れた人達が立っていた。
その内の一人がオレに挨拶をし、その人はにこりと微笑みながらオレに近寄る。


「今朝のミサはもう済んだのか?」

「はい、ついさっき。今度は昼前の十時です。……ミサに来たんですか?」

「いや。ネオに話があってな。いるか?」

「います……けど、今はちょっと……」

「……またか。相変わらずだな……」


苦笑いしながらそう言って、その人は教会の中に入って行く。
その人も告解部屋での"事情"を知る内の一人なのに、気にせずどうどうと入って行く辺り、流石昔からの知人だなと思った。
訪ねてきたその人達は、中に入って行った人を含めて三人。
一人は教会の入り口で、まるで門番の様に立ち尽くす男の人と、入って行った人のあとを追う様について行く女の人で、彼等を順番に見遣る。
オレはどうしようかと門番の様に立ち尽くす男の人をちらりと見てから掃き掃除を続けた。


「ネオ、いるか?」

「おや、また君かい?」

「きゃあっ!!」


そんな声が聞こえて心配になって覗いて見れば、告解部屋の扉が開かれていた。うわぁ、どうどうと……。
教会に入る前からナニをしていたのか予想していたとしても扉越しではなく、扉を開けて声をかけるなんて流石だ。
その人が扉を開けた事によって驚いた女性は、慌てて身形を整えて走って出て行った。


「あーあー。ボクまだだったのに……」

「そんなのどうでも良い。それより話があるからさっさと出ろ」


「ちぇ」と不満そうにしながら身形を整えるネオに呆れた様に溜め息を零すその人。
訪れた人達の服装は教会に不釣り合いな、でも存在感はばっちりで下手な事が出来ない、そんな威圧感のある制服を身に纏っている。
それもその筈―――彼等の身を包む制服は、この国の軍事警察機関のもので、彼らはこの街担当の軍事警察の人間なのだ。
そんな人が何故ネオに用があるのか、ネオが神父でありながら神聖なるこの場所でふしだらな事をしていても何も言わないのは何故か、それらの理由はオレも知っている。
掃き掃除を終わらせて箒を片付けに戻れば、奥の部屋ではなく会堂の側廊で彼等は話をしていた。


2016/12/23.



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あきゅろす。
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