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『ミッドナイト・オーバーキラー』
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とある晴れた日曜日。
今日は毎週恒例のミサのある曜日で、オレもニナもネオの手伝いで朝早くから会堂内を綺麗に掃除していた。
ミサの時間は場所によって違いはあるだろうが、この教会では朝の八時、十時、そして午後の十八時の三回行われる。
時間によって参加する人数は異なるけれど、中には三回とも参列する人もいるらしい。
因みにここで行われるミサは、そんなに長くはない。
何故ならば、この教会は珍しい事にちゃんとした修道女もいなく、いるのは関係のない手伝いのオレやニナだけで、教会で行われる様な事がはっきり言って出来ないからだ。
だからやるのは神父の有り難いお話―――オレもニナも胡散臭く思っているけど―――と希望のある人は告解部屋での罪の告白、そしてたまにだけれどニナが聖歌を歌う。
オレは訪れた信者達の誘導や、事務的な事柄等をしている。
だから訪れる人は多くない事は、オレ達にとっても少し助かってはいるのだ。
……そう思うのも罰当たりなんだろうな……。


「神父様……私、とても苦しいのです。胸の内に秘めているこの思い……もう耐えられなくて……」

「わかりました。では少しここでお待ちください。お時間になりましたらば、お呼び致しますので」


そういう二人の会話を聞いて、今日は少ない方だなとオレは訪れた信者達に笑顔で挨拶をする。
告解部屋に入る人の中には、罪の告白以外の目的の人もいたりする。
そういった人はネオによって教会に残るように指示されている―――それが合図なのだ。


「ノラ君も何時もお手伝い偉いわねぇ」

「いえ、そんな。ここ小さいしぼろっちいから褒められる程の事はしてないですよ」

「でもここいらに教会はここしかないだろう?ワシ達にとっても必要な所じゃけぇの。何か困ってたら言うておくれよ」

「ありがとうございます。二人共、身体に気を付けて」

「ありがとうねぇ」


手を振りながら見送る。今の二人は近所に住む老夫婦で、おじいさんは昔 建築関係の仕事をしていたらしく、この教会の屋根やら壁やらの修理をしてくれたりしてお世話になった。
年齢もあって今は流石に頼んではいないけれど、この教会の修理が必要そうな所を見付けては息子さんに言って修理しに来てもらっている。
何かと教会に関わってくれている人達だから、オレもこの二人と話をするのは楽しい。
他にもミサに参加した信者達がぞろぞろと帰って行くのを見届けてからオレは教会前の道の掃除を始める。
今朝も掃除をしたのに、今日は風が強くて葉っぱとかまた集まって来てしまった。くそう。


「ノラ。私、中の掃除が終わったらちょっと出かけたいのよ。でね、次のミサには間に合わないかもなの」

「わかった。何時頃に帰ってくるの?」

「十八時のミサには間に合うようにするわ。ごめんなさいね」

「良いよ。昼時のミサは人少ないし」


「ありがと〜」というニナはさっそく掃除に取り掛かった。
オレもそれにならって掃除を始める。
因みにネオはというと、残るように言っておいた人と一緒に、ただ今告解部屋にてお取込み中だ。
建物外に音が漏れる事はないが、会堂内には少し漏れているからそこで"何"をしているのか、バレバレである。
これが"告解部屋に入る人の中には、罪の告白以外の目的の人もいたりする"の真相だ。
ネオはミサに来た信者や、そうでなくても普通にお祈りに来た人や罪の告白に来た人とかにも手を出している。
しかもそれが何度も行われていても誰もその事に対して咎めないのだ。
相手になった人は見覚えのある顔ぶれもあるから、恐らくそういった人達が内緒にしているのだろう。
その人達も、自分の欲求を解消させるのを優先させているという事だ。


「……世の中腐ってんな……」


オレも腐ってるから強くは言えないけどね。


2016/12/10.



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