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『向日葵の咲く頃には』
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『暫しの休憩も終わり、次の種目!!仮装レースがいよいよ始まります!!今年用意された衣装は一体どんなものなのか、楽しみですね!!では、第一走者の生徒はスタート位置に着いてください!!』


実況者さんの指示に従い、最初に走る生徒達がスタートラインに横一列に並ぶ。
先ずは一年生達が走る為、宇高の出番は一年生が終わってからだ。
仮装レースは、ただ衣装に着替えるだけでなく、着替えの前に汚れない程度の障害物を三つ程クリアして、着替える為に設置された簡易的な試着室で衣装に着替えてゴールとなる。
改めてルールの確認をしていれば、スタート合図のピストルが鳴り、一年生達が一斉に走り出した。
応援席の生徒達も一斉に騒ぎ出し、騎馬戦の時とは真逆で、野太い声が多く聞こえる気がする。
そんな周りの状況を確認していれば、障害物をクリアした一年生達が順々に好きな試着室へと入って行く。
そこに置かれた衣装は、入った生徒も応援席にいるオレ達も何が出て来るのかはわからない、お互いにどきどき展開仕様となっているらしい。
といっても、今年の走者は殆んどが可愛い見た目の生徒が多い為―――中にはネタなのかわかんないけど、まるっきり男らしい人も参加している―――どの衣装でも結局は問題なく着こなすんだろうなと思っていれば、早速着替えの終わった生徒が試着室のカーテンを開けて出て来た。
衣装は多種多様で、あらゆる職種の制服系を始め、私服っぽいのやら部屋着っぽいのやら、ドレスやら着物やらと豊富なラインナップで登場してきた。
出て来た一年生達は、慣れない格好に恥ずかしさからか、もじもじしているのが可愛らしく、男心に刺激が与えられるらしく、応援席の野郎共―――男子高だから野郎しかいないの当たり前だけど―――が興奮気味に騒ぎ出す。
「すげぇ光景……」と若干引き気味に思いつつも、慣れないスカートに苦戦しつつ、捲れない様にと気を付けながら、のたのたと走る姿は確かに可愛いなと思った。
なんとかゴールした一年生達に引き続き、今度は二年生、宇高が走る番になった。
スタート合図が鳴り、宇高達が走り出す。
障害物を難なくクリアした宇高は、迷う事無く目の前の試着室へと滑り込む。


「宇高、どんな衣装で出て来るだろうね?」

「走りやすい衣装だと良いね」

「あー、さっきの着物の子とか、大変そうだったもんねー」


どんな衣装で出て来るのか楽しみに待っていたら、さっと勢い良くカーテンが開かれ、中から出てきたのは、他のクラスの生徒達で、一年生の時とは職種違いの制服系を着てたり、ミニスカタイプのバニーガールだったり、ミニ丈タイプのチャイナ服だったりと、良くそんなに沢山の衣装を用意出来たなと感心してしまう程、誰一人として衣装の被りが見られなかった。
やっぱり恥ずかしさから本気で走れない走者達を見ると、この学園ではきっとこれもこの種目の醍醐味になってんだろなと思えてきた。
スカートを押さえるその姿がなんとも言えないどきどき感があります。
そうしていれば、また誰か着替え終わった様で試着室から出てきた。
出てきたのは、ノースリーブに臍が見えてしまう程の短い丈に、上下お揃いのカラーリングの綺麗なプリーツスカートと白い二―ハイソックスにより出来た絶対領域が眩しい、手にはしゃらしゃらと揺れるポンポンを持った、髪の縛る位置をわざわざ上に変えたチアガール姿の宇高だった。
普段通り襟足で二つに結んでいた筈の髪型は、今は上の方で一部をちょこんと二つに縛り、残りの髪をそのままに下ろした、ツーサイドアップの形になっている。


「わぁ……!!見て、岸谷!!宇高めっちゃ可愛い!!」

「相変わらず似合ってるなー」


他の応援席の野郎共と同じく宇高の姿に興奮気味になるオレとは違って、岸谷は落ち着いた様子で応援を続けていた。
宇高は普段から可愛い格好に慣れている為、恥ずかしさも何もないからと衣装に着替えたあとも本気でゴールまで走った。
突然後ろから抜かされた他の走者達は、驚きつつも覚悟を決めて宇高につられる様に走り出す。
接戦を繰り広げる走りに緊張が続くが、僅差で宇高が先にゴールして一位を勝ち取った。


「凄い!!一位とったよ、宇高!!」

「今年は、はらはらする展開だったなー」


宇高の見事な走りにオレと岸谷も盛大に喜んだ。
一位の旗を手渡された宇高は、オレ達の方へと視線を向けて、その旗を掲げて手を振る。
そんな宇高へとオレ達も手を振って返したのだった。


2017/10/11.



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