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『向日葵の咲く頃には』
天国行きの報告


全寮制への入寮日を数日後に控えた今日、というか今は既に夜で日付を跨ごうとしている時間帯。
オレは両親に「ちょっと友達に呼ばれたから」と言って家を出て煌びやかな夜の街へと繰り出している。
こういう時、深入りしない両親に感謝はするが、ちょっと気にもして欲しいという気持ちもある……が、やっぱり助かる。
夜の闇に全く負ける気配のないネオン街の通りを慣れた足取りで進み、とあるお店のドアを開けた。
からんからんとドアが開いた事によって揺れたベルが、客が来店したと店内にいる人間に知らせる。


「あら、慎ちゃん。いらっしゃいませぇ」

「今晩はー、ママさん!!」


笑顔で出迎えてくれたのは、カウンター越しにいるこの店のマスターを務めているママ(♂)さん。
ママさんとの出会いは中学生の時で、当時付き合っていた人に連れて来られたお店がここ『バー・オレンジ』だ。
正直、私服だったとはいえ中学生をこんな店に連れてくる大人も、それを受け入れて許可を出すママさんもどうなのよって話だけど、今の所世間にはバレてはいないから恐らく大丈夫だろう……他にも未成年客は来てるしね。
オレは店の奥の何時ものテーブルの方へと足を運んで目的の人物達の姿を確認して声をかけた。


「よっ。遅くなったわー」

「やっと来た!!久し振りだなー!!」

「最近どうしてたんだい?」


オレの挨拶に返事を返したのは男二人組。
こいつらとの出会いはこの店に連れて来られた時に知り合った、所謂"同士達"だ。
いや、この店に来ている時点で皆同士みたいなもんだけどさ。
二人の名前はサトとナオト。サトは18歳でオレと同じく彼氏募集中で、ナオトは21歳の大学生。確か少し前に恋人と別れて今はフリーを満喫しているとかなんとか。
オレ達三人は、お互いの事情やらなんやらを話済みで、お互いの恋の応援をしている。そんなバー友達なのだ。
オレがサトの隣に座れば、待ってましたと言わんばかりに二人がグラスを持つ為、オレも急いで注文しようとすれば、ママさんが何時も頼むジュースと、恐らくママさん用の飲み物を持ってテーブルにきた。
流石はママさん。だけどカウンターから出てきて良かったのだろうか?
まぁ、大丈夫なんだろうと気にせず、お礼を言いつつ受け取って「カンパーイ!!」と四人でグラスを鳴らした。
因みにママさんとナオト以外はちゃんとジュースを頼んでいますよ。そこはママさんがしっかりしてるからね。


「ごめん、最近ちょっと慌ただしくて連絡出来なかったわ」


乾杯する前にナオトに聞かれた質問に答えれば、三人が続きを待っているという表情に変わった。
それを見てオレはにやりと口角を上げて続きを話した。


「オレ二年から全寮制の男子校に転校すんだ」

「えっ?!マジかよ!!良いな男子校!!羨ましい!!」

「だろぉ〜?オレもう楽しみでさー!!ここ最近慌ただしかったのも試験受けたり入寮準備してたりだったからなんだ」

「あらそうなのぉ?全寮制って事はここに来るの難しくなっちゃうかしら?」

「あー……うん、それね。試験受けに行ったけど、ちょっと家からも遠かったし、寮になれば自由も利き辛いだろうからなぁ……」

「そうか。少し寂しくなるな」


三人が見るからにしょぼんと肩を落とすから「連絡はするから!!」と慌てて伝えた。
こうやって寂しがってくれるのを目の当たりにすると不謹慎だけど嬉しくなるな。


「オレも暫く皆に会えないの寂しいけどさ、時間作るから。そしたらまた連絡するし」

「頼むわよぉ?慎ちゃんに合えないのアタシ、寂しいものぉ」

「なんだよママさん、オレとナオトだけじゃ満足出来ないのかよー?」

「サトちゃんとナオトちゃんも大好きだけどぉ、やっぱり慎ちゃんもいての三人セットって感じでしょぉ?」

「まぁ、ここではこのメンバーで飲むもんねー」

「オレも慎がいないの寂しいな」


「ナオトもかよー!!」とサトは言うが続けて「オレもだけどー!!」と言いながらオレに抱き付いてくる。
それをきっかけにナオトとママさんもオレに抱き付いてきて、オレとサトは仲良く挟まれた。
そんな良くやるやり取りにオレは心の底から笑い声をあげて受け入れた。
その後も「入寮日は何時なの?」といった質問に答えながらオレ達は飲み物とちょっとしたおつまみを摘まみながら時間を潰し、深夜遅くにバーを出て帰宅したのだった。


2016/3/20 加筆.



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あきゅろす。
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