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『向日葵の咲く頃には』
種目決め


須藤先生からの体育祭の事前予告から数日後。
生徒会より体育祭で行われる種目リストが発表されて、今から出場種目決めをオレ達のクラスでは行われようとしている。
発表されたリストは生徒全員にプリントが配られていて、何が行われて、何に出るのかを考える余裕があった。
というか毎年ほぼ内容は変わらないらしく、去年と同じ種目が殆んどだそうだ。
ただ一つ異なる所は、去年行われた種目一つが怪我人続出で危ないと判断されたらしく、それを廃止し、今年は別の種目になっているらしい。
オレはざっとだが種目リストに目を通して、運動オンチでも大丈夫そうな種目を探す。
……まぁでも、どれもこれも走るからそうかわんねぇか……。


「じゃあ、さっそく種目決め始めまーす!!やりたい種目がある人や、推薦がある人は先にどうぞー」


クラス委員長であるクラスメートが進行を始めた瞬間「はいはーい!!」と元気良く手が数本上がっていき、名指しされた生徒が次々に希望の種目や「この種目は○○君が良いでーす!!」等と話し合いを進めていった。
流石に種目がほぼ変わらないってだけあってか、結構すんなり各種目の出場メンバーが決まって行く。
リレーとか騎馬戦とか盛り上がるであろう種目には殆んど推薦で足の速い生徒や、体格の良い生徒が選ばれ、勝ちに行く気満々の様だ。
……まぁ、一部例外に格好良い系の生徒が騎馬戦やらなんやらに選ばれてるのは、きっとイケメンが汗を流して頑張る姿が見たいとか、そんな邪な理由もあるのだろう。わかるぞ、その気持ち。
そんな事を考えてれば、大体の種目の人選が決まっていき、岸谷はリレーに騎馬戦、そしてバレーに出場し、宇高はドッジボールと仮装レースに出場、オレに関してはバスケに借り物競争という事になった。
因みにオレが二種目だけというのは、クラスメートが既に体育でオレのだめだめっぷりを知っているからこそ「割りと差し支えのない種目だけで良いよ」という生温い優しさからだ。
喜べば良いのか泣けばいいのか。が、得点を考えればその選択は正しいのだろう、オレは無言で頷いて見せた。
こうして二年B組の体育祭種目決めは幕を閉じた。







その日の放課後、オレは岸谷のように体育祭の出場種目の練習もなく特に用事もない為、さて帰るかと鞄を持って教室をあとにした。
岸谷は騎馬戦の参加者の集まりやら練習やらがあったり、更に部活も通常に行われるとかで放課後は忙しいらしく、宇高は体育祭での集まりはないけれどやはり部活に参加している為、相変わらずの暇を持て余しているのはオレだけだった。
部屋へ帰って何をしようかと考えていれば、ふと廊下の角から見知った人物が一瞬見えた。
「あ」と思ったのと同時に、その人物もオレに気付いたのか、体勢は変わらず顔だけオレの方へ向けて「あ」と声を出していた。


「慎君だぁ。なんか久し振りだねー」

「栗山先輩」


見知った人物、栗山先輩とは本人が久し振りだと言う様に、転校初日のお昼の時以来だ。
オレも「お久し振りですね」と言えば栗山先輩の顔がへにゃりと笑った。
イケメンの可愛らしい笑顔にきゅんと胸が高鳴ったが、そこは栗山先輩らしく――……、


「慎君、暇?暇ならちょっとネコやってかなーい?」

「……暇ではありますがごめんなさい……」


「そっかぁ、ざんねーん」と肩を落とす栗山先輩に、きゅんとした胸の高鳴りを返して欲しいと思ってしまった。


2016/4/21.



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あきゅろす。
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