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『向日葵の咲く頃には』
2


兎に角、誤解を解かないとならないと、オレの本能がそう告げてきているので、目の前の誰かさんに改めて向かい合ってオレは話し出した。


「本当に誤解だから!!オレはあいつを招いた訳じゃないから!!不法侵入されただけだから!!つーか職権乱用もいいとこ!!」


誤解を解く為に演説していたが、改めて一條のしている事に若干怒りを覚えて、最後はここにいない一條への文句交じりになった。
管理人さんにも、今日からオレが住むから勝手に部屋入るなって注意されてた筈なのに気にせず鍵開けたって事だろ?
オレ、あそこに一人でいるとはいえ、もしかして一條が生徒会長やってる間はそんな事が多々起きるっていうのか?
もう一つは空き部屋のままだからドMの誰かを連れ込んでにゃんにゃんするとか?!


「余所でやれよ!!」

「何をだよ!!」

「あっ、いや、なんでもないです……」


ふと起こり得る未来に対してつい声に出してツッコんでしまい、誰かさんがびっくりした様子で聞き返してきた。
「別にあなたに言っている訳じゃないですよ」と心の中で呟いたが、誰かさんは知る由もないので伝わる訳もなく。

……ってか今更だけど、この人どちらさんよ?


「ねぇ、二人とも。この人は誰さん?」

「あー……この人は……」

「お前ら廊下で何騒いでんだよ」


岸谷が苦笑しながら誰かさんを教えてくれそうな所で第三者の声が廊下に響いた。
直接聞いたのは数週間振りではあるが、ざわついた廊下でも通るその声は覚えのあるもので「げっ」と口元を引き攣らせる。
第三者――― 一條は、誰かさんの後ろからひょっこり顔を出して、騒ぎの元となっているオレ達を見た。


「い、一條!!」

「うるせぇ、話しかけんな」


後ろからやって来た一條に誰かさんが嬉しそうに呼びかけるが、一條は鬱陶しそうにあしらった。
……つーか対応酷くねぇか。そう思ってみたが周りの反応が特に普通だったから「オレの気のせいなのかな?」と首を傾げた。
あしらわれたにも関わらず、誰かさんは一條に寄り添おうとしたり、手に触れようとしてそれを思いっきり弾かれたり、突き飛ばされたりしてもめげずに……めげずに?何度も同じ事を繰り返しては同じ結果に終わる。
……が、本人は至って嬉しそうに頬を緩めて、入寮日の時に見た事ある、とろりとした双眸で一條を見ている。
因みに一條は本気で嫌そうな顔で口元が引き攣っていた。


「……岸谷、めげずに一條に向かっていっているあの人はどちらのドMさんですか」

「……彼は三年の間宮 信彦(マミヤ ノブヒコ)先輩。一応、ここの風紀委員長を務めてる人だよ」

「ど、ドMの風紀委員長……ッ!!」

「一條に遊ばれてから目覚めてもーたらしいで。以降は見ての通りや。奴は自分以外の輩が一條と仲ようしとったらその相手に噛み付く様な厄介な奴なんよ」

「オレ噛み付かれたって認識でオケ?」

「まだ可愛げある噛まれ方や。いくとこいくと制裁行為スレスレん事までしよるで。あいつ」

「風紀委員長がそんなんで良いの?!」


「あんま関わりとーないから誰も言われへんのや」と宇高が一つ息を吐きながら説明してくれた。
風紀を取り締まる筈の人間がまさかの風紀を乱す行為を行っているとは……一体どんな事をしてきたんだ間宮とやら……怖くて知りたくもないよ!!
今も一條にアタックし続けている間宮先輩を見ながら「もう行っても良いかな?」と三人でアイコンタクトを取っていれば、一條がふとオレに視線を向けた。


2015/12/30.



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あきゅろす。
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