『向日葵の咲く頃には』
今日もまた一難
転校してから一ヶ月半程。
だいぶこの学園の生活にも、見かける特色にも慣れてきた数日前、この学園でオレは初の中間考査を受けた。
勉強にも、そこそこ問題なく付いていけているから大丈夫だろうなと思って受けた結果、赤はなかったがちょっと点数の悪い結果として返ってきた。
「……はぁ〜……」
「なんや、でっかい溜め息なんて吐いて」
「テストの結果がちょっと悪くって……」
「でも月ヶ瀬はここでの初めてのテストだろ?最初にしては十分だと思うけど?」
「オレ、七十点以下の点数、取った事ないもん……」
「……なんや、嫌味か。腹立つわー」
「ケッ!!」と悪態をつく宇高に慌てて謝れば軽く殴られた。
岸谷の話によると、宇高の点数はオレより少し低い位らしく、そんな時に発したオレの発言は確かに嫌味にしか聞こえないか。
改めて素直に謝れば「マコっちゃん馬鹿やと思っとったのに……」と呟かれた。
まぁ、二人とのやり取りで点数に関しての落ち込みは浮上し、期末は高得点取るぞと意気込んだ。
この学園では、個人のテストの結果表を配られる他に、上位を獲得した二十名程は名前と総合点数の書かれた表を張り出される仕組みになっていて、あとで見に行こうと約束した。
一限の授業が移動教室な為、教科書等を持って三人で廊下に出る。
廊下には他にも生徒達で賑わっていて、走っている人もいたから、ぶつからない様に気を付けながら歩いていれば、前方に通路ど真ん中に突っ立っている生徒が視界に入った。
今日もまたイケメン発見。そう思っていればその人物と目が合って、見てたのバレたと思い、さっと視線を外したが、どうやら相手は違った様だ。
「おい!!貴様が月ヶ瀬 慎だな?!」
「……お、オレぇ?!」
「正直、貴様の名しか知らん!!合ってんのか合ってないのか言え!!」
「あ、はい。合ってます……けど……」
名前しか知らないのに、ピンポイントにオレを指すのはどういう事なのかと不審な目で見ていれば、宇高も怪訝そうにオレと目の前の誰かさんを交互に見てきた。
因みに岸谷は若干困り顔で様子を窺っている。困り顔も格好良いですよ、天使様。
「なん、マコっちゃん何時の間に知り合いになったん?」
「え、初対面ですよ」
「初対面で絡まれる天才なん?」
「オレ、結構声かけられる方だよ。男女共に。ただし女子からは基本逃げるけど、イケメンからなら付いてくよ」
「いや、今はそんな話してる場合じゃないでしょ?」
ひそひそと、内緒話をする様に小さい声で三人で話していたら「聞きたい事がある!!」と誰かさんが声を張って問いかけてきた。
「貴様、一條とはどーゆう関係だ?!正直に答えろ!!」
「……んんん?」
人差し指を突き出しながら問われ、更にその質問内容に眉間に皺を寄せていれば、誰かさんの何かに触れてしまったのか、誰かさんは眉を吊り上げながら更に聞いてきた。
「知っているんだぞ?始業式の日、一條を部屋に招いていた事を!!」
「ファッ?!」
オブラートにもなんにも包まないでドストレートに言う誰かさんの発言で、その場でオレ達の様子を窺っていた全員が「えっ」と驚きの声を上げる。
それは勿論、岸谷も宇高も同じで、どういう事かと訴える視線を寄越してきた。
「マコっちゃん……」
「ちが……聞いてくれ、宇高!!聞けばわかるから!!」
「月ヶ瀬、そこまで一條の事を……」
「岸谷も聞いて!!オレは悪くないの!!帰ったらあいつ人の部屋に勝手に上り込んでたの!!」
「「そんなんじゃないかな、と思ってた」」
「何?!二人の中でオレを弄るのが流行ってるの?!」
「酷いよ二人とも!!」と若干涙目に訴えるが、当の二人は否定もせずにけらけら笑っている……酷い。
2015/12/30.
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