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『向日葵の咲く頃には』
初日からまた一難


体育館から教室へ戻り、今日は昼前に一時間、お昼挟んだあと、午後の授業を二時間分受けるのが今日の日程だ。
お昼前の授業は数学で、チャイムが鳴る数分前には数学担当の教師が教室に入って来た。
初っ端から数学かぁ。苦手って訳でもないけれど、だからって得意な科目とかもないんだけどさ。自慢にもならねぇ。
一礼を済ませて授業開始となった。





授業終了のチャイムが鳴り響いて、教師が立ち去って行く。
オレは詰めていた息を吐き出して腕を上げて伸びをする。
最初の授業だから今日は前回までのおさらいという事で、オレもどこまで進んでいるとか把握出来て良かった。
午後の授業は現国と生物学で、六限目は移動教室らしい。
まぁその前に飯だ飯。


「二人は学食で食うの?」

「基本的にはね。たまに気分を変えて購買で買ったりもするけど」

「でも今日は学食行かへん?ボクお蕎麦食べたいねん」

「麺類は流石に購買では難しいもんね〜」

「じゃあ行こうか」


そう言ってオレ達は学食へ向かった。
学食は寮の食堂と造りは同じだが、内装が少しだけ違っていて、寮の食堂の窓にかけられていたカーテンはベロア調の臙脂色のカーテンだったけど、学食の窓には白いレース調の清涼感のあるカーテンだったり、寮の食堂ではシャンデリアが輝いていたけど、学食の明かりは馴染みのある蛍光灯で、ここにもある役員専用の二階席では少し小さめのシャンデリアがいくつかある感じだ。
どっちにしろ役員は特別なんだなと思った。
さて何にしようかと券売機を見てメニューを決めていると、ふと違和感を感じ、いやまさかと思いながらもポケットに触れてみて、ある筈の物がない事に気付く。
oh……やっちまったぜ……。そんな事を呟けば近くにいた二人が、なんだと振り返る。


「財布を持ってくるの忘れました」

「……阿呆なん?学食行く言うてなんで一番必要なモン忘れんねん」

「教室に忘れた?それとも寮?」

「鞄の中だから教室だな。悪いけど取りに行くから先食ってて!!」


宇高の指摘に「ごもっともです」と項垂れたオレは急いで教室へ戻って行った。
教室と学食まではそんなに距離がある訳ではないし、階段も沢山上り下りする訳でもないから楽っちゃ楽だけど、忘れなければもっと楽だったよねー。泣けてくる。
教室に戻って財布を手に取り、今度こそちゃんとポケットにしまい、再び学食へ向かう。
その際に、来た道とは反対の方から行ってみようかなんて学園内の探索がてら試にと思い、それがまた間違った選択になるなんて思いもしないオレは、来た道の反対方向に足を運んだ。


2015/9/10.



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