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『向日葵の咲く頃には』
新学期が始まるよ!!


入寮してから二日が経った。
入寮翌日には管理人さんが教科書類が届いたと部屋まで持って来てくれて―――その際に洗濯に出てた左部屋のシーツも持って来て整えていった―――その日はいよいよ明日から登校だと妙な緊張感から抜けず、一日中うずうずしていた。
転校とか初めての経験だから本当緊張する……て、小学生かオレはっ!!
一応確認の為に制服に袖を通してみたり、必要なものを岸谷達に聞いて準備したり―――宇高のアドバイスには女子力があった―――何かと慌ただしく過ごした。
そしてついに今日!!今日から新学期ですよ皆さん!!新しい環境の中でオレもわくわくですよ!!なんてったって男子校だからね!!
「そこかよ!!」とかツッコミが聞こえてくるが、そうだよそこだよ重要ポイントだよ!!
入寮日から生徒をちらちら見て来たけど、ここ本当イケメンとか美形とか可愛い系とかそんなんばっかでさ!!
目の保養になるのは良いけどなんでこんなに多いのこの学園。
顔面偏差値も入試に関わってくるの?
そんな事をちらっと宇高に聞いてみたら「せやったらマコっちゃんは落ちとるな」と辛口コメント頂きました。
平凡顔ですよどーせ……因みに宇高からは"マコっちゃん"と呼ばれてます。岸谷の事は"淳ちゃん"だそうです。
朝ご飯もしっかり食べて身嗜みもきっちり整えて、さぁ行こうとオレは岸谷達に続いた。


「二日振りの校舎だー」

「月ヶ瀬は転校生だからまず職員室に行くの?」

「らしいね。担任に会いに来いって連絡貰った」

「職員室はここから真っ直ぐ行った先にあんで。迷わんからここまででええやろ」

「うん。ありがとう二人とも。教室でも仲良くしてね〜」

「任せろ、弄ったるわ」

「やだ宇高クン男前〜」

「あはは。じゃあまた教室でね」


ばいばいと手を振る二人にオレも「またね」と言いながら手を振り返す。
階段を上がって行く背中を見つめてからオレは職員室に向かった。
宇高に言われた通り真っ直ぐ行けば職員室と書かれたプレートを見付けて、緊張を解す様に深呼吸を三回位する。
「よし」と意気込んでノックをしてからスライド式のドアを横に引く。
ドアが開いた事で中の人達の視線を一気に浴びたが、お辞儀をする事で遮る。


「失礼します。転校してきました、月ヶ瀬なんですが……」

「転校生?……あぁ、ちょっと待ってね。えっと……須藤先生?」

「お、来たかー、転校生。こっちだー」

「あ、いたいた。あの先生が担任だからね」

「はい、ありがとうございます」


近くにいた教師が対応してくれて、無事に担任の元へ辿り着けた。
担任を見てまず思ったのは、垂れ目気味のにやっとした感じの笑みに、芥子(からし)色の髪をつんつんと遊ばせたヘアセットの、見た目からして教師っぽくない雰囲気のイケメンだった。
てかまたイケメンだよ!!さっき対応してくれた教師も優しそうな雰囲気のきれい系だったよ?!教師のレベルも高ぇのかよくっそー!!やったね!!


「大丈夫かお前……?なんかすげぇ変な顔してるぞー?」

「大丈夫じゃないですが大丈夫です」

「どっち」


オレの答えにけらけら笑う担任。てかこの人笑うと八重歯が目立って可愛いんだけど!?
全く……この学園は変な奴もいるみたいだけど、萌の倉庫……いや宝島じゃないか。
お父さん、お母さん。オレ、ここで良かったよ……。


「……ってな訳だが、ここまで良いか?」

「……………何がですか?」

「やっぱ聞いてなかったのか……。二度手間じゃねぇか」

「スミマセン。ちゃんと聞きます。申し訳ないです」

「ったく。じゃあ、もう一回な。オレの名前は須藤 優太(スドウ ユウタ)。お前が通うB組の担任な。担当教科は化学。用があって職員室に来てもいなければ大体化学準備室にいるからそっちに来いよ。今度こそここまで良いな?」

「はい、バッチリです」


念を押す様に改めて言われて強く頷き返ば「よし」と許しの返事を貰えた。
「あとは通いながらいろいろと慣れろ」と投げやりにパスされてそのまま教室へ行く事になった。
教室は本校舎二階。因みに本校舎には各学年のクラスと職員室、一部の移動授業で使用する教室に食堂や購買があり、渡り廊下で繋がった別校舎には生徒会室や風紀室、図書館、そして移動授業で使用する別の教室がある。
因みに別校舎の最上階には入寮日に訪れた理事長室がある。
化学室は別校舎に位置している為、授業の時はちょっと歩かなきゃいけないらしい。
そんなに距離がある訳じゃないから大変って訳ではないから全然構わないけど。
そんな説明を受けながら何時の間にか教室に辿り着いていて「呼ぶまでここで待機」と言って須藤先生は教室内に入って行った。
がやがやと賑やかな話し声が一瞬弱まり、再び賑やかになった。


「おーい。とりあえず黙れー。お前ら無事進級おめでとう。これから一年また頑張れよー」

「「「「はーい!!」」」」


まるで幼稚園や小学校低学年を担当してるみたいな感じの扱いに一瞬困惑した。
生徒も生徒で元気の良い返事を返すとかいくつなの皆……。


「てな訳で今日は転校生が来てるから紹介するな。入って来ーい」

(え、もうですか?こんなもんなの?)


転校というのは初体験の事だからどんなものなのかわからないけど、こんなあっさりした流れで入るものなのか?
良くわからないけど呼ばれたからには入らないとだよな。
意を決してドアを開ければ、賑やかな話し声はぴたりと静まり返った。



2015/7/6.


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あきゅろす。
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